ペドロジスト
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都城盆地の累積性黒ボク土における有機炭素含量と植物珪酸体
井上 弦杉山 真二長友 由隆
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2000 年 44 巻 2 号 p. 109-123

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抄録

都城盆地の累積性黒ボク土断面の連続試料について,有機炭素含量および植物珪酸体を調べた結果,以下のことが明らかになった。1)有機炭素含量は,断面の下部から上部に向かって連続的に変化しており,その変遷は母材物質の堆積量および堆積様式,気候条件,植生の繁茂状況などに起因して,複雑な変化パターンを示した。2)植物珪酸体分析から,累積性黒ボク土のほぼ全層準を通して,イネ科植物が卓越する草原植生が推定された。その主体となる植物は,10Bt〜8B2層ではヨシ属,8B2〜8A2層ではクマザサ属,8A2〜7A/C2層ではススキ属,7A/C2〜1Ap層ではメダケ属(メダケ節・ネザサ節)であり,年代の推移と共に土壌有機物の供給の主体となる植物が変遷していったことを示唆した。3)イネ科起源の主要分類群における植物体生産量の推定値の総量と有機炭素含量の関係は,各Unit毎に密接な正の相関をとるだけでなく,埋没腐植層(クロニガ)を含む第5〜4層および第3〜2層において,回帰式の傾きが近似した。このことから,本地点の埋没腐植層において,有機炭素含量が,数千年の範囲内でほとんど減少していない可能性が推察された。

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© 2000 日本ペドロジー学会
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