日本歯周病学会会誌
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原著
高振動域エアースケーラーの象牙質表面に対する影響について
鈴木 邦治好士 亮介横山 京介氏家 久海老原 元田中 憲二増田 晴美伊藤 公一
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2004 年 46 巻 2 号 p. 111-117

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抄録

短時間で効率よくプラークや歯石を除去する時には, 手用スケーラーよりも超音波あるいはエアースケーラーが用いられる。今回は, 超音波スケーラーと同等の歯石除去能力のあるエアースケーラーに着目した。本実験の目的は従来品よりも振動数が高振動域に設定されたものを使用し, 歯石除去時間と象牙質表面性状に与える影響を従来品と比較検討することである。振動数が16,000~17,000 Hzである高振動域エアースケーラー (HS) と従来品 (AS) を用いて実験を行った。歯石除去時間は, 肉眼的に人工歯石が除去されるまでとした (n=14)。象牙質表面性状観察は, ヒト象牙質片に対してHS, ASで20秒間器具操作を行い, 何も処理しないコントロール面と比較した。走査型電子顕微鏡による表面観察と表面粗さ計測 (算術平均粗さ : Ra, 十点平均粗さ : Rz) を行った (n=6)。歯石除去時間は, HS 514±103秒, AS 546±191秒であったが, 統計学的有意差はなかった。表面観察では, コントロールと比較してHS, ASでスメア層の減少が観察されたが損傷部は見られなかった。表面粗さ (μm) は, Raがコントロール0.82±0.08, HS 0.77±0.08, AS 0.81±0.65, Rzがコントロール3.69±2.53, HS 3.52±2.34, AS 3.53±9.30の値を示した。HS, ASとコントロール間およびHS, AS間に統計学的有意差はなかった。HSは, 今回比較検討した項目においてASとほぼ同様の歯石除去性能を有するものと思われる。しかし, HSは振動数を可聴限界音域に設定し, 従来品よりもチップ先端の振幅を約1/3に減少している。その結果, 術者に対する器具操作中の不快音および不快振動が明らかに減少したことから, HSの臨床的な有用性が考えられた。

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© 2004 特定非営利活動法人 日本歯周病学会
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