抄録
広汎型侵襲性歯周炎は,歯周炎を除き全身的に健康ではあるが,急速な歯周組織破壊,家族内発現を認めることを特徴とする歯周炎である。本報では,広汎型侵襲性歯周炎と診断された患者に対して,歯周外科,歯周再生療法,歯移植および歯科矯正治療を含めた包括的な治療を行った。患者は21歳の女性で,下顎前歯部の動揺,歯肉の発赤腫脹を主訴に来院した。臨床診査およびX線診査によって,高度なアタッチメントロスと歯槽骨の吸収が多くの部位で認められた。家族歴として,父方叔父が壮年の早い時期から総義歯であったこと,母方従兄弟が患者と同年代で同様な症状を示していた。歯周基本治療終了後臼歯部において歯周外科を行った,その際上顎右側第一大臼歯は抜歯し,同側第三大臼歯を移植した,また上下顎左側臼歯部においてはエナメルマトリックスデリバティブ(EMD)を応用した。その後上顎に歯科矯正治療を行い最終補綴処置を行った。その結果,歯周組織の良好な改善が認められた。術後4年間のメインテナンスを行っているが経過は良好である。