日本歯周病学会会誌
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原著
唾液中コチニン量測定による喫煙・受動喫煙検査の有用性
-GCFエラスターゼ活性を一指標として-
伊藤 弘沼部 幸博
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2009 年 51 巻 3 号 p. 260-268

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抄録

歯周組織破壊と喫煙の関連は, 疫学的に報告されているものの, そのメカニズムは不明であるが, 宿主の反応が関与していると考えられている。本研究の目的は, 喫煙および受動喫煙が顆粒球由来GCFエラスターゼ活性に対する影響と歯周組織破壊に関連する生化学的マーカーの検索を目的とした。被験者は, 健康な歯周組織を有する男性92名が本研究に参加した。PPD, PlI, GI, GCF量の各臨床パラメーターが各被験者に行なわれた。GCFからは, 細胞外エラスターゼ活性が低分子特異基質を用い, α1-antitrypsin (A1AT) 量, elastase A1AT complex (E-A1AT) 形成量はELISAにて測定した。唾液中コチニン量はELISAにて測定した。
以上の検索より以下の結果を得た。
1.唾液中コチニン量から, 自己申告による非喫煙者中受動喫煙者は40名, 非喫煙者は14名であった。
2.非喫煙者, 受動喫煙者, そして喫煙者において, 臨床パラメーターにおいては有意差を認めなかった。
3.受動喫煙者において, 唾液中コチニン量に対し細胞外エラスターゼ活性とフリーエラスターゼにおいて正の相関を認めた。
4.喫煙者において, 唾液中コチニン量と活性型E-A2MG形成において負の相関を認めた。
以上の結果より, 喫煙・受動喫煙は初期の歯周組織防御機構において, 顆粒球由来GCFエラスターゼ活性の亢進を示し, 歯周病の環境因子として喫煙のみならず受動喫煙も重要な因子であると考えられた。さらに, 唾液中コチニン量の測定は, GCFエラスターゼ活性の測定に加えて1つの有用な指標となりうる可能性が示唆された。
日本歯周病学会会誌(日歯周誌)51(3) : 260-268, 2009

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