日本歯周病学会会誌
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51 巻, 3 号
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巻頭言
原著
  • 関野 愉, 久野 彰子, 菊谷 武, 田村 文誉, 沼部 幸博, 島田 昌子
    原稿種別: 原著
    2009 年 51 巻 3 号 p. 229-237
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/18
    ジャーナル フリー
    近年, 日本国内における高齢者の歯周疾患の有病率が増加している。本研究は1)介護老人福祉施設入居者の歯周疾患罹患状況の調査, 2)今後遂行される縦断研究のベースラインデータの作成を目的とした。東京都および山梨県の9施設において, 54~101歳の歯を有する入居者215名を対象とした。すべての被験者の現在歯数, プラーク指数(PlI), プロービングデプス(PPD), 臨床的アタッチメントレベル(CAL), プロービング時の出血(BOP)の記録を行った。被験者を65歳未満, 65~74歳, 75~84歳, 85歳以上の4群に分けて分析した結果, 現在歯数は75歳以上の2群において他の群より有意に少なく, PlIは有意に高い傾向が認められた。平均PPD, CALおよびBOPはそれぞれ2.6±0.8 mm, 3.0±1.1 mm, 32.0±29.7 %であった。また被験者の39.5 %に6 mm以上の歯周ポケットが認められ, 76.5 %に5 mm以上, 17.8 %に9 mm以上のアタッチメントロスがみられた。この結果から, 介護老人福祉施設入居者の歯周炎進行のリスクの高い被験者を特定し, 歯周病の予防のため, 専門家によるケアを行う事が必要と考えられた。
    日本歯周病学会会誌(日歯周誌)51(3) : 229-237, 2009
  • 西村 実佐子, 佐々木 好幸, 木下 淳博
    原稿種別: 原著
    2009 年 51 巻 3 号 p. 238-251
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/18
    ジャーナル フリー
    歯科の専門家としての歯科衛生士が, さまざまな臨床の現場において具体的にどのような業務を担っているのかは把握されていない。本研究は, 歯周基本治療に関して歯科医師および歯科衛生士の連携の実態を知ることを通じて, 今後の歯科衛生士業務の発展に寄与することを目的とする。さらには, これからの歯科医療を担う学生教育の充実, チーム医療の発展を考えるうえでの基礎資料を得ることを期待する。
    調査は, 日本歯周病学会専門医が勤務している一般開業歯科医院の院長を対象として, 質問紙調査法により行った。質問項目は「歯周病の診断と治療の指針」を参考に, 主として歯周基本治療の段階での歯科衛生士の介入について質問する内容とした。
    合計202件の回答を得た結果, 院長経験年数と歯科衛生士が主として処置をおこなうユニット台数に有意な正の相関があった。また, 歯科衛生士が主として処置をおこなうユニット台数とは, 一日平均歯周炎病名患者数ならびに歯科衛生士が接する時間比率, 歯周基本治療の各段階など, 多数の項目と有意な正の相関が認められた。
    本調査により, 近年の歯科衛生士像, 歯科衛生士の臨床能力の高さ, および歯科衛生士の具体的業務内容の決定に関連する因子等が明らかになった。これらの結果より, 歯科衛生士教育への提案, および歯科衛生士の職域拡大の可能性について考察した。
    日本歯周病学会会誌(日歯周誌)51(3) : 238-251, 2009
  • 入江 浩一郎, 友藤 孝明, 江國 大輔, 東 哲司, 三部 俊博, 粕山 健太, 馬越 通弘, 山本 龍生, 森田 学
    原稿種別: 原著
    2009 年 51 巻 3 号 p. 252-259
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/18
    ジャーナル フリー
    ラットの実験的歯周炎モデルに対する, 液体歯磨剤(抗炎症成分+ビタミン類+抗菌成分配合歯磨剤), 液体歯磨剤から抗炎症成分とビタミン類を除いたもの(抗菌成分配合歯磨剤), および抗炎症成分, ビタミン類と抗菌成分を除いたもの(対照歯磨剤)の効果を比較した。26匹のウィスター系雄性ラットの両側下顎第一臼歯にリガチャーを4週間巻き, 歯周炎を惹起した。リガチャー除去後, 20匹のラットを3群に分け, 各液体歯磨剤を歯肉溝に1日1回, 2週間塗布した。残り6匹からはベースライン(リガチャー除去直後)の組織を採取した。屠殺後, 下顎骨を摘出し, 固定, 脱灰, パラフィン包埋し, 頬舌的に組織切片を作成した。ヘマトキシリン・エオジン染色, マロリー染色およびtumor necrosis factor(TNF)-αと8-hydroxy-2'-deoxyguanosine(8-OHdG)に対する免疫染色を行ない, 組織定量分析を行なった。接合上皮下結合組織内の好中球数と血管腔数は, ベースライン群および対照歯磨剤群よりも他の2群の方が有意に少なかった。抗炎症成分+ビタミン類+抗菌成分配合歯磨剤群は, 歯磨剤を作用させた他の2群よりも接合上皮下結合組織内のコラーゲン密度が高く, 歯根膜の8-OHdG陽性細胞数とTNF-α陽性細胞数が少なかった。これらの結果から, 本液体歯磨剤の抗炎症成分, ビタミン類および抗菌成分は, 歯周組織の炎症の改善と破壊された組織の治癒を促進させる効果を相加的に付与する可能性が示唆された。
    日本歯周病学会会誌(日歯周誌)51(3) : 252-259, 2009
  • 伊藤 弘, 沼部 幸博
    原稿種別: 原著
    2009 年 51 巻 3 号 p. 260-268
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/18
    ジャーナル フリー
    歯周組織破壊と喫煙の関連は, 疫学的に報告されているものの, そのメカニズムは不明であるが, 宿主の反応が関与していると考えられている。本研究の目的は, 喫煙および受動喫煙が顆粒球由来GCFエラスターゼ活性に対する影響と歯周組織破壊に関連する生化学的マーカーの検索を目的とした。被験者は, 健康な歯周組織を有する男性92名が本研究に参加した。PPD, PlI, GI, GCF量の各臨床パラメーターが各被験者に行なわれた。GCFからは, 細胞外エラスターゼ活性が低分子特異基質を用い, α1-antitrypsin (A1AT) 量, elastase A1AT complex (E-A1AT) 形成量はELISAにて測定した。唾液中コチニン量はELISAにて測定した。
    以上の検索より以下の結果を得た。
    1.唾液中コチニン量から, 自己申告による非喫煙者中受動喫煙者は40名, 非喫煙者は14名であった。
    2.非喫煙者, 受動喫煙者, そして喫煙者において, 臨床パラメーターにおいては有意差を認めなかった。
    3.受動喫煙者において, 唾液中コチニン量に対し細胞外エラスターゼ活性とフリーエラスターゼにおいて正の相関を認めた。
    4.喫煙者において, 唾液中コチニン量と活性型E-A2MG形成において負の相関を認めた。
    以上の結果より, 喫煙・受動喫煙は初期の歯周組織防御機構において, 顆粒球由来GCFエラスターゼ活性の亢進を示し, 歯周病の環境因子として喫煙のみならず受動喫煙も重要な因子であると考えられた。さらに, 唾液中コチニン量の測定は, GCFエラスターゼ活性の測定に加えて1つの有用な指標となりうる可能性が示唆された。
    日本歯周病学会会誌(日歯周誌)51(3) : 260-268, 2009
症例報告
  • 石井 里加子, 関野 仁, 重枝 昭広
    原稿種別: 症例報告
    専門分野: -ベストハイジニスト賞受賞-
    2009 年 51 巻 3 号 p. 269-278
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/18
    ジャーナル フリー
    本報は, 難治性てんかんならびに運動機能障害, 中等度精神遅滞を伴う薬物性歯肉増殖症患者に対し, 歯周基本治療後, 歯肉増殖が著しく改善し, 13年間良好に維持されている症例について報告する。患者は18歳の男性で, う蝕治療と歯肉の腫れを主訴に来院した。3歳より抗てんかん薬の服用を開始し, 初診時には全顎的にプラーク及び歯肉縁上, 縁下歯石が沈着し, 浮腫性の腫脹を伴う線維性歯肉増殖が認められた。歯周基本治療後, 歯肉増殖が改善しサポーティブペリオドンタルセラピー(SPT)へ移行した。しかし, 20歳以降てんかん発作の多発により来院間隔が空き, 徐々に運動機能も低下し口腔内状況が悪化した。26歳時の脳梁離断手術後, 麻痺が増強しセルフケアが困難となった。その結果, 深い歯周ポケットが再発しフラップ手術を施行した。その後も患者の自立的な口腔清掃を支援すべく, 清掃用具や磨き方を工夫し1ヵ月間隔のSPTを行った。13年経過した現在は2ヵ月間隔のSPTにて良好に経過している。この症例を通し, 抗てんかん薬を多剤服用していても, プラークコントロールが良好であれば歯肉増殖の改善ならびに再発を防止できることが示された。そして, 長期にわたり健康支援するためには, 患者の意志を尊重しつつ, ライフステージや全身状態に合わせたセルフケアへの支援と, それを補うプロフェッショナルケアが重要であると考えられた。
    日本歯周病学会会誌(日歯周誌)51(3) : 269-278, 2009
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