日本歯周病学会会誌
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症例報告
骨髄移植前の短期集中的なオーラルマネジメントにより
歯周炎を劇的に改善できた急性骨髄性白血病の1例
蔵下 舞
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2011 年 53 巻 1 号 p. 34-39

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抄録
難治性の血液疾患患者に造血幹細胞移植を実施する際に, 歯周炎などの病巣が感染源になり得ることから, 術前にそれらの病巣の治療および口腔衛生管理を行う必要がある。しかし, 歯科受診から移植が実施されるまでの期間は概して短い。今回, 高度の歯肉の炎症を伴う急性骨髄性白血病(AML)患者の口腔環境を, 短期間に, かつ劇的に改善させることに成功したので報告する。
患者は48歳の女性で, 約半年前にAMLの診断を受けた。他病院において療養中, 歯肉の著明な炎症症状を自覚したため, 同院歯科口腔外科を受診した所, 歯ブラシの使用を中止し, 含嗽のみで対応するよう指示を受けた。患者は, その1か月後に骨髄移植のため当院に転院となり, 当科に紹介された。全顎にわたって歯肉の出血・腫脹が著明で, 以前から有する慢性歯周炎を背景として, AML発症による易出血性およびそれに伴う清掃不良が加わった歯周炎と診断した。歯周ポケット内の非付着性歯垢と壊死組織の除去, 塩酸ミノサイクリン軟膏の投与, 3DSリテーナーの使用等の非侵襲的処置によって, 歯肉の出血・腫脹は急速に消退し, 歯ブラシによるセルフケアが可能となった。さらに, 縁下歯石の除去も行い, 重度の歯肉炎症は短期間で改善した。なお, 歯科初診時, 6.4mg/dlと高値を示したCRP値は, 歯科受診6日目に1.3mg/dlにまで低下し, 予定通り骨髄移植前処置に臨むことが可能となった。
本症例に示すような事例を積み重ねることによって, 造血幹細胞移植患者に対してオーラルマネジメントを実践することの重要性が確立されるものと考える。
日本歯周病学会会誌(日歯周誌)53(1) : 34-39, 2011
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