日本歯周病学会会誌
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原著
歯周基本治療に対する反応性がメインテナンス期における
歯周ポケットの深化に及ぼす影響
松本 知久中島 啓介村岡 宏祐横田 誠
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2011 年 53 巻 4 号 p. 243-253

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抄録

歯周治療への反応が良好でない症例やメインテナンス中に歯周ポケットの深化を認める症例に遭遇することは少なくない。我々は, 歯周基本治療に対する個々の歯周ポケットの反応性がメインテナンス中の歯周ポケットの深化に関連しているのではないかという仮説をたて, それを検証するために慢性歯周炎患者を対象とした縦断的研究を行った。本研究では, 歯周基本治療を行った後, 深い歯周ポケットが残存しかつプロービング時出血(BOP)を認めた部位には歯周外科治療を行った。メインテナンス期に移行した35名の患者のうち, 歯周ポケットの深化を認めた19名の患者の部位(n=895)を解析の対象とした。なお, 歯周ポケットの深化部位の定義はメインテナンス開始前には3 mm以下に改善していたがメインテナンス中に再び4 mm以上になったものとした。すべての部位を深化部位群(n=82)と安定部位群(n=813)に分け, 歯周基本治療前後での臨床パラメーターの変化について解析した。さらに, すべての解析対象部位を歯根形態(単根歯, 複根歯), BOPの有無あるいは動揺の有無により分類して, 歯周基本治療後のプロービングポケットデプス(PPD)減少量からメインテナンス中に歯周ポケットの深化が起きない確率を予測するモデルを構築した。その結果, 歯周基本治療によるPPDの減少量が小さい部位ではメインテナンス中に歯周ポケットの深化が認められる可能性が高いことが明らかになった。本研究の結果から, 歯周基本治療によるPPDの減少量を測定することにより, メインテナンス中に歯周ポケットの深化が生じると予想される部位を特定できる可能性が示唆された。
日本歯周病学会会誌(日歯周誌)53(4) : 243-253, 2011

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