抄録
重度歯周炎患者においては病的で著しい歯の移動(Pathologic tooth migration:PTM)による歯列不正が認められることが少なくない。こうした患者において歯列不正が存在するとブラッシングが困難であるばかりか,さらに咬合の不調和や外傷性咬合が発現することにより歯周炎の増悪や再発が起き易いと考えられる。今回,骨格性下顎前突症と多くのPTMを伴った広汎型重度慢性歯周炎を有する49歳女性患者に,歯周基本治療,骨移植術を含む歯周外科治療,可撤式バイトプレートと矯正用アンカースクリューを利用した部分的矯正治療,および修復・補綴治療を包括的に行った。この結果 , 低侵襲かつ効率的に歯周組織の環境改善と歯列の連続性,適切なアンテリアガイダンスが獲得された。現在,supportive periodontal therapy に入り3年経過したが,良好に歯周組織と咬合の安定が維持されている。本症例から PTM を有する重度慢性歯周炎患者においては,矯正治療を含む包括的治療により PTM を解消し,炎症と力のコントロールを行うことが歯周治療を成功させるために極めて有効であることが示された。 日本歯周病学会会誌(日歯周誌)56(4):442-450,2014