日本歯周病学会会誌
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原著
生物学的に許容できる歯根面を得るためのルートプレーニング: 実験的研究
加納 千博小林 宏明野崎 浩佑妻沼 有香須藤 毅顕Khemwong Thatawee三神 亮和泉 雄一
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2020 年 62 巻 1 号 p. 1-15

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抄録

歯周治療におけるルートプレーニングの目的は, 露出歯根面の炎症起因物質を除去することである. しかしながら, 露出歯根面のPAMPsやDAMPsの浸透度はよく分かっていない. また, 歯周再生療法において, 歯根面から歯根膜幹細胞が受ける影響にも不明な点が多い. 本研究では, 細胞為害性物質の浸透度を計測し, また, 歯根膜幹細胞が露出歯根面から受ける影響を検討し, ルートプレーニングの最適深度を確立する.

ヒト抜去歯を用い, レーザー顕微鏡にて削合深度を計測した. 削合物中の細菌ゲノム量をリアルタイムPCR法で定量した. THP-1細胞を削合物で刺激し, IL-1βmRNA発現量とタンパク発現量を測定した. 阻害剤を用いてIL-1β産生経路を検討した. 露出歯根面上への歯根膜幹細胞の定着増殖実験を行った.

レーザー顕微鏡測定から, SRPの3ストロークまでは20-30μmずつ, 4ストローク以降は10μmずつ削れていた. また, 8ストロークまでの削片中で細菌ゲノムが検出され, これらの削片はIL-1βmRNA発現を誘導し, この産生にはPAMPsやDAMPsが関わりNFκB経由であった. 露出歯根面上の歯根膜幹細胞数は3ストローク削合で増加した.

結論として, 炎症起因物質は8ストローク深さまで浸透している. 3ストロークのルートプレーニングで歯根膜幹細胞の定着増殖数が増加することが示唆された.

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© 2020 特定非営利活動法人 日本歯周病学会
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