日本歯周病学会会誌
Online ISSN : 1880-408X
Print ISSN : 0385-0110
ISSN-L : 0385-0110
原著
剥離性歯肉炎患者に対するエクオール検査とサプリメンテーション(第1報)
川本 亜紀菅野 直之吉沼 直人佐藤 秀一
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2020 年 62 巻 4 号 p. 200-208

詳細
抄録

剥離性歯肉炎は歯肉の疼痛を伴う難治性の特殊な歯周病であり,その治療は口腔衛生管理と副腎皮質ホルモン製剤の局所塗布による対症療法である。本症は閉経期前後の女性に多いことから,エストロゲンとの関連が示されている。本研究ではエストロゲンに類似した化学構造を持つエクオールに着目し,エクオール産生能の有無と剥離性歯肉炎との関連およびエクオール摂取による症状の改善効果を検討した。

剥離性歯肉炎患者女性(剥離群)6名および正常な歯肉を有する女性(正常群)10名を対象とし,尿中エクオール量,歯周組織検査,プラークコントロールレコード,刺激時唾液量の測定および疼痛に関するアンケート調査を行った。剥離群にはエクオールサプリメントを1日10 mg,1ヵ月間摂取してもらい摂取前後で正常群と比較検討した。

正常群10名中8名の尿中エクオール量が規定値(1 μmol/g cre)より高い値を示したのに対し,剥離群では規定値より高い値を示したのは6名中1名であった。剥離群ではエクオール摂取後にBOPの統計学的に有意な改善が認められた。また6名中4名に歯肉の疼痛の軽減がみられた。以上の結果から,剥離性歯肉炎の症状を有する閉経前後の女性患者に対する新たな検査法と治療法として,エクオール尿中検査とエクオールサプリメント摂取の可能性が示唆された。

著者関連情報
© 2020 特定非営利活動法人 日本歯周病学会
前の記事 次の記事
feedback
Top