2021 年 63 巻 3 号 p. 143-150
歯周病原細菌Porphyromonas gingivalisは歯肉上皮細胞へ感染することで,歯周病の病因に関与することが知られている。本研究では,ヒノキチオールおよびシャクヤクエキスの,P. gingivalisの歯肉上皮細胞への感染に対する影響を調査した。
精製したP. gingivalis培養上清中のジンジパイン活性を測定したところ,ヒノキチオールおよびシャクヤクエキスはジンジパイン活性を抑制した。P. gingivalisとヒト歯肉上皮細胞(Ca9-22)を共培養し,細胞表面に付着した生菌数を計測したところ,シャクヤクエキスはP. gingivalisのCa9-22表面への付着を抑制した。P. gingivalisとCa9-22を共培養し,細胞内に侵入した生菌数を計測したところ,ヒノキチオールおよびシャクヤクエキスは,Ca9-22細胞内に侵入したP. gingivalis生菌数を減少させた。
ヒノキチオールはジンジパイン活性を抑制することで,シャクヤクエキスはジンジパイン活性およびP. gingivalisの細胞への付着を抑制することで,歯肉上皮細胞内に侵入したP. gingivalis生菌数の減少に寄与することが示唆された。