2022 年 64 巻 4 号 p. 142-157
歯周病は,成人が歯を喪失する一番の原因であるが,歯周炎患者は歯周病以外の理由によっても歯を失う。本研究では,メインテナンス期間中の歯周炎に起因する歯の喪失(以下TLPD)とそれ以外の要因による歯の喪失(TLOR)に関して,歯周炎新分類とそれぞれの発生率との関連性を縦断的に検討することを目的とした。60~143ヶ月(中央値97ヶ月)のメインテナンス治療を受けている被験者(328人)にretrospectiveに歯周炎新分類を適応し,1-KM法あるいはGray法により累積発生曲線を作成した。Cox比例ハザード回帰分析により多変量解析を行った。
ステージIとグレードA被験者ではTLPDおよびTLORは見られなかった。ステージIV被験者,グレードC被験者および広汎型被験者の97ヶ月TLPD累積発生率はそれぞれ6.6%,3.4%および2.8%であり,それぞれの分類群間で有意差を認めた。Cox比例ハザード解析から,歯周炎新分類は性別,年齢やメインテナンス開始時の現在歯数とは独立して全喪失歯(TLOA)発生率およびTLPD発生率と有意な関連があった。一方,TLORに対しては,歯周炎新分類との関連はなく,メインテナンス開始時の現在歯数とのみ有意な関連であった。歯周炎新分類はメインテナンス期間中におけるTLOAおよびTLPDと強い関連性があり,TLORとは有意な関連がないことが示された。
Patients with periodontitis could lose teeth for reasons other than periodontal disease. The aim of this study was to assess the association of the use of the new periodontitis classification with changes in the incidence rate of tooth loss due to periodontitis (TLPD) and tooth loss due to other reasons (TLOR) during the maintenance phase. A total of 328 patients (mean age: 52.1 years) treated for periodontitis at a dental clinic who were followed up for periods ranging from 60 to 143 months were retrospectively categorized according to the new 2018 classification of periodontitis at the baseline. The association of the new classification of periodontitis with the cumulative incidence rate for tooth loss (TL) during the maintenance phase was explored using 1-KM survival analysis and Gray analysis. The cause-specific mortality was examined by regression analysis using a Cox proportional hazards model. No tooth loss was found in stage I or grade A patients during the maintenance phase. The 97-month cumulative incidence rates of TLPD were 6.6%, 3.4%, and 2.8% for stage IV, grade C, and generalized patients, respectively. Statistically significant differences were observed among stages and grades, and between extents. The multivariate Cox regression analysis demonstrated that the new periodontitis classification was associated with the cumulative incidence rate of TL and TLPD, but not of TLOR, although TLOR was associated with the number of teeth at the start of maintenance. The new periodontitis classification has been shown to be associated with TL and TLPD, but not with TLOR during the maintenance phase.
歯周治療の目的の一つは歯を長期にわたって保存し,口腔内で機能させることにある。そして,歯の喪失を抑制するためにアクティブな歯周治療を行い,獲得された健康的な歯周組織をメインテナンスサポートケアによって維持することが行われる。しかしながら,メインテナンス/SPT(以下メインテナンス)を行っても歯の喪失を生じることがある。歯の喪失は,歯周治療の予後を判定するための明確な判定基準の一つであり,これまでに歯の喪失に影響を与える要因について,患者単位1-8)で,あるいは歯単位1-6,9-11)で数多くの研究がなされている。歯周炎患者を対象にしたこれらの研究のほとんどは,喪失理由を歯周病に限定せず,全喪失歯(以下TLOA)をアウトカムとしている4-7,12-27)。一方,喪失理由別に喪失歯数を分類している研究5,28-35)はあるが,歯の喪失に及ぼす影響について原因別に踏み込んだ解析は多くの場合行われていない3,36,37)。
これまで用いられてきた歯周炎の分類に代わって,アメリカ歯周病学会・ヨーロッパ歯周病連盟共催ワークショップにおいて策定され,2018年に公表された歯周炎の新規分類38)(以下歯周炎新分類)が,歯周治療における教育,研究,臨床の分野で用いられている。新分類については本邦において多くの場で既に周知されているが,その概略を簡潔に記すと,歯周炎新分類は,歯周炎の重症度に歯周治療を複雑にする要因を加味して規定された4段階のステージと,歯周炎の進行速度を判定した3種類のグレード,さらには歯周炎の広がりを範囲で示し,これら3要素を組み合わせて表記した新しい枠組みである。著者らはメインテナンス期の,歯周炎に起因した歯の喪失(以下TLPD)を指標にして,この歯周炎新分類とその予後について縦断調査を行い,歯周炎新分類が予後を予知しうる診断であることを示してきた39-41)。しかし,歯周炎患者が歯を喪失する理由は歯周炎に限定されず,歯周炎以外の理由によっても歯を喪失する。本研究の目的は,歯周炎新分類とTLOAとの関連性を調べ,さらにTLOAをTLPDと歯周炎以外の原因による歯の喪失(TLOR)とに分けて,歯周炎新分類との関連性について縦断調査をおこなうことである。
しまぶくろ歯科医院(大阪市)にて2003年2月10日から2021年6月21日までの期間に受診歴のある患者のうち,初診時の問診票,口腔内診査,歯周組織検査と全顎のエックス線検査から歯周炎新分類のステージ,グレードおよび範囲の診断が可能で,日本歯周病学会認定歯周病専門医(以下,歯周病専門医)によるアクティブな歯周治療終了後にメインテナンス期間が5年以上経過している患者を選択し,その中から受診間隔が13ヶ月以上生じた患者を除外した集団を解析対象とした。
本研究はヘルシンキ宣言を遵守して計画され,日本歯周病学会倫理委員会において承認(令和3年2月5日承認,承認番号 第JSP2020001号)の後実施された。本研究では,「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」に従い,対象となる被験者の包括同意を得るとともに,解析に用いた情報は個人が特定できないように匿名化した。
2. 臨床検査項目および患者情報初診時の患者問診票,口腔内診査資料および診療録から,糖尿病罹患の有無,HbA1c値,喫煙歴および1日の喫煙本数,性別,初診時年齢,初診時現在歯数,初診からの治療期間,メインテナンス期間,受診期間中の喪失歯数と主たる喪失理由,現在歯の6点法によるプロービングデプス,Millerの分類による動揺度,Lindhe & Nyman42)による分岐部病変2度以上の有無,二次性咬合性外傷の有無,歯の病的移動やフレアーアウトの有無,および対合歯のある歯数を調査した。ただし,埋伏あるいは半埋伏智歯については,現在歯数や喪失歯の対象から除外した。
なお,被験者のHbA1c値に関して,初診時が2012年4月1日以前についてはJDS値によるものと判断し,0.4%を加算して現在用いられている国際基準NGSP値に換算してグレード判定の基準として用いた。
初診時の全顎のデンタルあるいはパノラマエックス線画像から,最重度罹患歯の歯根長に対する骨吸収率をscheiのルーラーを用いて計測した。
3. 歯周炎新分類の診断上述の抽出臨床データを基に,歯周病専門医が歯周炎新分類の基準38,43)に従い,歯周炎新分類のステージおよびグレードを決定した44)。
本研究ではCALデータが揃っていなかったために,診断基準にCALを用いることができなかった。そのため,エックス線画像による骨吸収率を基にステージとグレードの評価を行った。
なお,プロービングデプス5 mm以上の基準については,該当部位のエックス線画像で骨吸収が認められる場合のみを対象とした。
ステージの決定後に,そのステージに該当する骨吸収レベルに達している歯の割合が,初診時現在歯数の30%未満では限局型,30%以上では広汎型とした45)。
4. 歯周治療歯周治療の詳細は島袋ら44)の報告に記載の通りであるが,その内容を簡潔に記す。被験者には通法に従い,歯周組織検査,診断の後,治療計画を策定して,口腔衛生指導,スケーリング,ルートプレーニングを主体とした非外科的な歯周基本治療を行った。再評価後に,歯周病専門医が必要と判断し,被験者の同意が得られた場合には歯周外科処置を行い,また必要に応じて口腔機能回復治療を行った。メインテナンスは歯周組織の状態,被験者のプラークコントロール状況に応じて1~6ヶ月間隔で行った。
抜歯については,島袋ら44)の報告と同じ判断基準が適応されていた。
5. 統計解析年齢を変数とした平均値の有意差検定は,2群間ではStudent's t-検定を,3群以上ではOne-way ANOVA検定を用いた。独立性の検定はχ2検定もしくはFisherの正確検定を用いた。現在歯数を変数とした平均値の有意差検定は,2群間ではMann-Whitney U検定,3群以上ではKruskal-Wallis検定を用いた。
メインテナンス期間において,歯の喪失をイベントとしてKaplan-Meier法を用いてTLOAに対する累積発生曲線(1-KM法)を作成した。有意差の検定はLog-rank法を用いた。さらに,3群以上については多重比較検定として,post-hoc検定(holm法)を行った。観察期間を通じてイベントが発生しなかった被検歯の打ち切り日は観察期間内の最終診療日とした。一方,TLPDあるいはTLORに対する累積発生曲線作成は,両者がお互いに競合するイベントであるため,Grayらの競合イベントの累積発生率(cumulative incidence)を用いて行った。群間の有意差の検定はGray検定を用いた。さらに,3群以上については多重比較検定として,post-hoc検定(holm法)を行った。被験者全体のメインテナンス期間中央値である97ヶ月時点における累積イベント発生率を,Kaplan-Meier法あるいはGrayらの方法で作成された累積発生曲線の代表値として記述した。
多変量解析は,被験者をクラスターとして投入し,クラスターを当てはめたCox比例ハザード回帰分析(cause-specific hazard)を用いて行った。
統計解析にはEZR version 1.53を用いた46)。
全対象被験者は328人(男性99人,女性229人)で,初診時平均年齢が52.1±11.3歳(平均±標準偏差,以下同),初診時現在歯数は26.4±3.5歯で,全受診期間およびメインテナンス期間はそれぞれ59~220ヶ月(99.7±20.7ヶ月)および60~143ヶ月(95.9±20.7ヶ月,中央値97ヶ月)であった。喫煙者は25人,元喫煙者は55人,HbA1c 6.5%以上の加療中糖尿病患者は5人であった。
2. 歯周炎新分類の患者特性本研究で対象とした被験者集団の初診時の検査を用いて歯周炎新分類に基づく診断をretrospectiveに行った。ステージ分類において,最も多かったのはステージIII被験者(178人)で,次いでステージII被験者(76人)とステージIV被験者(62人)となった。グレード分類においては,グレードB被験者とグレードC被験者がそれぞれ173人と151人であった。ステージI被験者(12人)とグレードA被験者(4人)は少数であった。限局型被験者と広汎型被験者はそれぞれ161人と167人であった。
表1に本研究の対象被験者における患者背景を示す。年齢は性別とステージ分類間に有意差を認めた。メインテナンス開始時の現在歯数はステージ,グレード,および範囲で有意差を認めた。さらに,歯周炎新分類の各3要素は他の分類要素すべてに対してその分布に有意差を認めた。

被験者の患者背景
被験者全体で,メインテナンス開始時に8635歯存在していたが,メインテナンス期間中の喪失歯は197歯(2.2%)であった。それを歯種別に調べると,上顎の前歯,小臼歯および大臼歯がそれぞれ27,38,および58歯であり,下顎の前歯,小臼歯,および大臼歯がそれぞれ10,18および46歯であった。
メインテナンス期間において,歯の喪失と歯周炎新分類との縦断的な関連性を知る目的で,1-KM法を用いてTLOA累積発生曲線を作成した(図1)。ステージI被験者では歯の喪失は生じなかった。ステージII,ステージIIIおよびステージIV被験者の97ヶ月TLOA累積発生率はそれぞれ0.4%,1.7%および7.9%であり,ステージ分類間で有意差がみられた。グレードA被験者では歯の喪失の発生はみられず,グレードBおよびグレードC被験者の97ヶ月TLOA累積発生率はそれぞれ0.8%と4.1%で,グレード分類間で有意差を認めた。限局型および広汎型被験者の97ヶ月TLOA累積発生率はそれぞれ1.0%と3.6%であり,有意差を認めた。性別においては有意差を認めなかった。55歳未満と55歳以上の2群に分けた年齢階層では,97ヶ月TLOA累積発生率がそれぞれ1.9%と2.9%を示し,年齢階層群間で有意差がみられた。メインテナンス開始時の現在歯数を25歯未満,25歯以上28歯未満および28歯以上の3群に層別化すると,97ヶ月TLOA累積発生率はそれぞれ4.9%,2.8%および1.0%となり,有意差を認めた。

歯周炎新分類におけるTLOA累積発生曲線
ステージ(a),グレード(b),範囲(c),性別(d),年齢群(e)およびメインテナンス開始時の現在歯数群(f)別に,1-KM法を用いてTLOA累積発生曲線を作成した。
(a)群間全体(log-rank test,p<0.01),ステージI vs ステージIII,ステージI vs ステージIV,ステージ II vs ステージIII,ステージII vs ステージIVおよびステージ III vs ステージ IV(post-hoc test,p<0.01)
(b)群間全体(log-rank test,p<0.01),グレードA vs グレードC およびグレード B vs グレード C(post-hoc test,p<0.01)
(c)限局型 vs 広汎型(log-rank test,p<0.01)
(d)男性vs女性(log-rank test,p=0.60)
(e)年齢<55歳 vs 年齢≧55歳(log-rank test,p<0.01)
(f)群間全体(log-rank test,p<0.01),メインテナンス開始時の現在歯数25歯未満群 vs メインテナンス開始時の現在歯数25歯以上28歯未満群,メインテナンス開始時の現在歯数25歯以上28歯未満群 vs メインテナンス開始時の現在歯数28歯以上群およびメインテナンス開始時の現在歯数25歯未満群vsメインテナンス開始時の現在歯数28歯以上群(post-hoc test,p<0.01)
歯周炎患者が,メインテナンス期間中に生じる歯の喪失の主たる原因は歯周病と考えられるが,う蝕,歯内疾患や歯根破折など他の要因が原因でも歯の喪失は生じる。そこで歯の喪失を生じた被験者数と被験者1人あたりの喪失歯数を,TLPDとTLORに分類し,TLOAを含めて検索した(表2)。
被験者328人のうち,101人(30.8%)がメインテナンス期間中に歯の喪失を経験していた。歯の喪失を経験しなかった被験者,1歯喪失した被験者,および2歯以上喪失した被験者の3群に区分けして,歯周炎新分類を含む要因別に各被験者数を検索した。TLOAとTLPDについては,性別では有意差は見られなかったが,年齢群,メインテナンス開始時の現在歯数別群,および歯周炎新分類の3分類すべてで有意差を認めた。一方,TLORについては,メインテナンス開始時の現在歯数別群でのみ有意差を認めた。次に,患者1人あたりの喪失歯数についても検討したが,同様の結果が得られた。すなわち,TLOAとTLPDについては性別を除くすべての要因で有意差を示し,TLORについてはメインテナンス開始時の現在歯数別群でのみ有意差が認められた。

メインテナンス期間中に歯を喪失した被験者数と被験者1人当たりの喪失歯数
メインテナンス期間中のTLOA累積発生率は歯周炎新分類と関連することが縦断調査から示されたが,歯の喪失を被った被験者割合や被験者1人当たりの喪失歯数については,TLPDとTLOR間でこれらに影響する要因に明らかな差異が認められた。そこで,このことをさらに縦断的に検討する目的で,歯周炎新分類を含めた各要因別に,Grayらによる累積発生率を算出してTLPD(図2)とTLOR(図3)におけるそれぞれの累積発生曲線を作製した。
TLPD累積発生率に関しては,TLOA累積発生率と同じ傾向を示していた。すなわち,歯周炎新分類の各分類が高位になるほど97ヶ月TLPD累積発生率が上昇し,ステージIV被験者,グレードC被験者および広汎型被験者ではそれぞれ,6.6%,3.4%および2.8%を示し各分類内で最も高値を示した。またステージ分類間,グレード分類間および限局型と広汎型被験者間で有意差を認めた。性別では有意差を認めなかったが,年齢別群間とメインテナンス開始時の歯数別群間では有意差を認めた。一方,TLOR累積発生率については,ステージ被験者分類間およびメインテナンス開始時の歯数別群間で有意差を認めたが,他の要因では有意差がなかった。
さらに,歯周炎新分類を含めた各要因別に,TLPD累積発生率とTLOR累積発生率との関連性をより明瞭にするために,要因ごとに,競合イベントであるTLPDとTLORに対する積み重ね累積発生曲線を作成した(図4)。ステージ分類のうちステージIV被験者では97ヶ月TLPD累積発生率が6.6%と極めて高かったのに対しTLOR累積発生率のそれは1.3%であった。しかしステージIII被験者ではそれぞれ1.0%に対し0.7%,およびステージIIではそれぞれ0%と0.4%とその比率が逆転した。グレード分類と範囲においても,高位の分類ではTLOAに占めるTLPD発生率が大部分を占めていたのに対し,分類が低位に移行すると,TLPD累積発生率が減少し,その一方でTLOR累積発生率の低下がわずかとなり,TLPD累積発生率とTLOR累積発生率との比率が逆転した。性別と年齢別群間には差が見られず,メインテナンス開始時の現在歯数別群間では歯数が少ない群ほどTLOA累積発生率に占めるTLOR累積発生率の割合が上昇した。

歯周炎新分類におけるTLPD累積発生曲線
ステージ(a),グレード(b),範囲(c),性別(d),年齢群(e)およびメインテナンス開始時の現在歯数群(f)別に,Grayらによる方法を用いて,TLPD累積発生曲線を作成した。
(a)ステージ III vs ステージ IV(gray test,p<0.01)
(b)グレード B vs グレード C(gray test,p<0.01)
(c)限局型 vs 広汎型(gray test,p<0.01)
(d)男性vs女性(gray test,p=0.55)
(e)年齢<55歳 vs 年齢≧55歳(gray test,p<0.01)
(f)群間全体(gray test,p<0.01),メインテナンス開始時の現在歯数25歯未満群 vs メインテナンス開始時の現在歯数25歯以上28歯未満群,メインテナンス開始時の現在歯数25歯以上28歯未満群 vs メインテナンス開始時の現在歯数28歯以上群およびメインテナンス開始時の現在歯数25歯未満群vsメインテナンス開始時の現在歯数28歯以上群(post-hoc test,p<0.01)

歯周炎新分類におけるTLOR累積発生曲線
ステージ(a),グレード(b),範囲(c),性別(d),年齢群(e)およびメインテナンス開始時の現在歯数群(f)別に,Grayらによる方法を用いて,TLOR累積発生曲線を作成した。
(a)群間全体(gray test,p<0.05),ステージII vs ステージ IV(post-hoc test,p<0.01)
(b)グレード群間(gray test,p=0.95)
(c)限局型vs広汎型(gray test,p=0.78)
(d)男性vs女性(gray test,p=0.24)
(e)年齢<55歳 vs 年齢≧55歳(gray test,p<0.01)
(f)群間全体(gray test,p<0.01),メインテナンス開始時の現在歯数25歯以上28歯未満群 vs メインテナンス開始時の現在歯数28歯以上群およびメインテナンス開始時の現在歯数25歯未満群vsメインテナンス開始時の現在歯数28歯以上群(post-hoc test,p<0.01),メインテナンス開始時の現在歯数25歯未満群 vs メインテナンス開始時の現在歯数25歯以上28歯未満群(post-hoc test,p<0.05)

歯周炎新分類における,競合するイベントであるTLPDおよびTLORの積み重ね累積発生曲線
ステージII(a),ステージIII(b),ステージIV(c),グレードB(d),グレードC(e),限局型(f),広汎型(g),男性(h),女性(i),年齢<55歳(j),年齢≧55歳(k),メインテナンス開始時現在歯数25歯未満(l),メインテナンス開始時現在歯数25歯以上28歯未満(m)およびメインテナンス開始時現在歯数28歯以上(n)別に,Grayらによる方法を用いて,TLPDおよびTLORの積み重ね累積発生曲線を作成した。
TLORの原因にはう蝕,歯内疾患および歯根破折などが含まれるので,原因別に歯周炎新分類との関連性を調査した(表3)。
メインテナンス期間中に喪失したTLOR 55歯のうち,最も多かったのは歯根破折の29歯(52.7%)であり,次いでう蝕の15歯(27.2%)と続いた。そして,グレード分類でのみ,その分布に有意差がみられた。
歯根破折を起こした29歯のうち27歯は既根充歯で,メタルコアが16歯,スクリューポストが7歯であり,ブリッジの支台歯は5歯であった。この27歯の既根充歯のうち24歯は初診時には既に根管処置や歯冠修復処置がおこなわれていたものであった。残りの2歯は生活歯における歯根破折であった。

TLORにおける喪失原因別喪失歯数
メインテナンス期に生じた歯の喪失に影響を及ぼす要因について検討するために,性別,年齢,およびメインテナンス開始期の現在歯数を共変数として,歯周炎新分類のステージ,グレードおよび範囲に対して,Cox比例ハザード回帰分析を用いて多変量解析を行った(表4)。TLOAおよびTLPDを目的変数とした場合には,歯周炎の3分類に有意差を認めたが,性別,年齢やメインテナンス開始時の歯数では有意差がなかった。このことに対してTLORを目的変数とした場合には,歯周炎新分類には有意差は認められず,メインテナンス開始時の現在歯数でのみ有意差を認めた。

Cox比例ハザード回帰分析の結果
本研究では,一般歯科医院にて平均95.9ヶ月±20.7(60~143ヶ月,中央値97ヶ月)のメインテナンス治療を受けている328人の被験者を対象に,retrospectiveに歯周炎新分類を適応して歯周炎新分類被験者のメインテナンス期間の歯の喪失を縦断調査し,歯周炎新分類とメインテナンス期間におけるTLOA,TLPDおよびTLOR発生率との関連性について検討した。その結果,歯周炎新分類は性別,年齢やメインテナンス開始時の現在歯数の要因とは独立してTLOAおよびTLPD発生率と強い関連性を有していたのに対し,TLOR発生率とは関連しないことが示された。
本研究ではTLOAをTLPDとTLORに分けて解析を行ったが,TLPDとTLORは一方が生じると他方の発生が不可能となる関係にあり,そのためお互いに競合リスクとなる。このような競合リスクのあるイベント発生の解析において,Kaplan-Meier法はそれぞれの累積イベント発生率を過大推定することがある。すなわち,TLPD発生率とTLOR発生率を比較検討するにあたって,Kaplan-Meier法を用いると,TLOA発生率<TLPD発生率+TLOR発生率となる可能性がある。そこで本研究では,競合リスク関係にあるイベントの発生確率分析に適し,TLOA発生率=TLPD発生率+TLOR発生率が成立するGrayらの方法を用いて累積イベント発生率を算出し,その累積発生曲線の作成をおこなって,Gray検定によりイベント発生率の群間比較を行った。
著者らは歯周炎新分類と歯周炎患者の予後について,TLOAあるいはTLPDを指標として関連性を検討し,歯周炎新分類が予後を予測するにあたって有用であることを示してきた39-41,44)。しかしながらこの一連の研究における被験対象者は,一般歯科医院である1施設のみの患者である。さらに,歯周炎新分類の診断は,旧来の診断47)よりも診断基準が明確であるとはいえ,診断のグレーゾーンが存在し48,49),専門医であってもGold standardである診断者には及ばす,正確な診断がなされていない場合のあることが報告されている49,50)。さらに言えば,一般臨床医による診断は歯学部学生にも劣ると指摘されている50)。著者らが示してきた歯周炎新分類とその予後に関する結果が,本邦において普遍的なものか否かは,高度の先端医療を施す施設や大学病院を含めて,今後様々な施設の患者を対象にして検証されなければならない。
これまでのところ,TLPDのみをエンドポイントとして調査した研究は数少なく11,22,51-53),歯周炎の予後調査研究のほとんどがTLOAをエンドポイントとして,歯の喪失に対して影響のある要因を調べた研究である4,5,7,14,16,20,23,27-31,33-37,54,55)。歯の喪失に関して,歯周炎以外の理由について調査を行っていても,TLORに及ぼす影響を調べている研究36)やTLOAとTLPDのそれぞれに対する影響を区別して解析している研究26,37)は数少ない。
エンドポイントの対象をTLPDに絞れば,歯周炎の進行に焦点を当てることになり,喪失の原因を問わず対象をTLOAとすれば歯周炎患者の口腔内全体の管理という観点からの予後研究となるであろう。プラークコントロールは歯周炎の進行抑制の目的だけではなく,う蝕の発生抑制も含み,メインテナンスは全ての理由から歯の喪失を防ぐサポートケアであることより33,56),歯の喪失理由を歯周病に限定せずに行う調査研究が大多数を占めるのは当然と言える。
歯周炎患者を対象とした予後研究では,歯の喪失理由の主たるものは歯周病と考えられるのであるが,TLOAのうちTLPDが占める割合は,Chambroneら9)のシステマティックレビューに取り上げられた報告では41.2%~86.6%,Carvalhoら57)に取り上げられた研究では32.4%~75.3%といずれも幅広く,全ての研究で必ずしも高かったわけではない。あるいは,わずか5.7%と極端に少ないとする報告もある28)。メインテナンス非遵守者のTLOAに対するTLPD割合は,遵守者に比べて高くなるとの報告もある36)。喪失割合の小さくないTLORにも焦点をあてて解析を行うことは,十分に意義あることであろう。研究間でTLOAに対するTLPDの割合に差異が生じているのは,研究対象となった被験者の歯周炎程度やメインテナンス遵守状況などに加えて,アクティブな治療期の治療内容により差が生じている3,11)ためと考えられる。
健康な,あるいは歯肉炎患者と歯周炎患者におけるメインテナンス期間15-25年の間における,歯の喪失を調べた研究58)では,前者では喪失歯39歯(被験者51人中)に対し,歯周病による喪失はなく,歯内疾患によるものが17歯(43.6%),う蝕14歯(35.9%),および歯根破折が5歯(12.8%)であった。それに比較して,歯周炎患者56人では喪失歯38歯で,原因が歯周炎11歯,う蝕10歯,歯根破折7歯,および歯内疾患6歯であった。さらにはステージII,ステージIIIおよびステージIV被験者のTLOAはそれぞれ0.2,0.6および2.75歯/患者と報告され,ステージ分類の上昇とともにTLOAが増加することは本研究結果と一致していた。
本研究では,抜歯理由を区分けするに当たって,抜歯と判断した直接の原因を主たる理由とした。しかし,複合的な理由から抜歯に至る例も少なくない。例えば,水平性骨吸収と歯肉退縮が著しく,分岐部が歯肉縁上に現れ,歯間ブラシで清掃可能なクラスIII分岐部病変を有する大臼歯で歯根破折が生じた場合には,歯周炎の進行が歯根破折を誘発したと解釈できる。あるいは,大臼歯の根尖性歯周炎に対して,歯内治療で症状の改善が見込めないために,原因となった骨レベルの高い1ないし2根をルートリセクションあるいはヘミセクションで除去し,骨レベルの低い残存根の歯周炎が進行して,あるいは歯根破折が生じて抜歯となった場合には,間接的ながら主たる原因は歯内疾患だとする意見もあるかも知れない。歯内治療を施された臼歯では分岐部病変が多くなり59),歯内病変罹患歯はそうでない歯と比較して歯槽骨吸収の進行60)や歯の喪失リスクが高い61)と考えられている。あるいは骨吸収の進行により歯肉退縮と根面露出が生じると根面う蝕にも罹患しやすくなる。このように,歯周病とう蝕,歯内疾患,および歯根破折とは相互に影響し,歯の喪失に対して臨床的には競合的な関係が生じている症例もある。
歯の喪失に対する影響を調べるための多変量解析において,今回の研究では原因分析に適した原因別Cox回帰分析を適用したが,競合リスクにあたるTLPDとTLORに関連性が強いと結果にバイアスが生じる。結果には示していないが,競合リスクを考慮するFine-Gray回帰分析を用いても解析を行ったが,Cox回帰で得られた結果を覆すことはなかった。従って,TLORはTLPDの競合リスクであるが,臨床的に強い関連を有する場合があるにせよ,TLPDに及ぼす歯周炎新分類の影響を失わせるほどの競合性を,少なくとも統計学的には有していなかった,と解釈される。
Martinez-Cauntら34)やRavaldら35)はメインテナンス開始時の現在歯数がTLOAに影響を与えていたと報告している。TLOAに対するTLPDの割合は前者が72.5%であり,後者が58.9%で本研究結果から大きく逸脱するものではなかった。これらの研究ではメインテナンス開始時の現在歯数がTLPDやTLORにまで影響するのかどうかは調べられていない。本研究ではメインテナンス開始時の現在歯数は,単回帰ではTLOAとTLPDに対して関連が見られたが,多変量回帰ではともに関連が認められなかった。これらの研究における結果の違いは,被験者背景,歯周炎の進行度や歯の喪失に対して影響を検討した要因の組合せなどの差異が結果の違いに反映したのかもしれない。
これまでの島袋ら39),竹立ら40)やTakedachi et al.41)の研究から,歯周炎新分類のステージ,グレード,および範囲がメインテナンス期のTLPDと強い関連を有することが明らかとなり,本研究からさらに歯周炎新分類が喪失の原因を限定しないTLOAに対しても影響することが示された。一方,歯周炎新分類の3要素の程度が上昇してもTLORの累積発生率の増加は,TLPDに比較してごく軽微であった。歯の喪失がなかったステージIやグレードA被験者を除いて,歯周炎新分類の程度の高低とは無関係にほぼ一定であったとも言える。さらに多変量解析からも歯周炎新分類はTLORに対して関連性を有していなかった。
TLORは,今回検討した要因の中では,メインテナンス開始時の歯数のみと関連を認めた。歯の喪失が増加すると,すなわち現在歯数が減少すると,歯周炎の重症度,進行度や広がりとは独立して,歯周病以外の原因によって歯の喪失リスクが高まると考えられる。また,歯数の減少は,多くの場合,歯内治療を伴う欠損補綴処置が施されている,あるいは義歯が使用されていることを意味する。
TLORの喪失原因は,う蝕,歯内疾患関連,歯根破折およびその他の4つの項目に分けられていた。最初の3要因それぞれの歯の喪失に対して,多変量解析を行ったところ,歯根破折が原因の喪失に対しては,メインテナンス開始時の現在歯数は有意差を認めた(調整ハザード比0.78,95%信頼区間:0.70-0.87,p<0.01)(結果には示さず)。しかし,他の各2要因による歯の喪失に対しては,どちらの要因に対しても有意差を認めなかった。従って,TLORに対してみられたメインテナンス開始時の現在歯数の影響は,歯根破折による喪失が強く反映されたものと考えられる。
歯根破折が原因による歯の喪失は29歯(14.7%)で,TLPD(72.1%)についで多かった。過去の報告では,歯根破折が原因の歯の喪失はTLPD(30%)を上回って,TLOA中の48%を占めるとする報告30),やTLPDと歯根破折が原因の喪失歯が同じ32.3%との報告5)がある。我々の結果は,Chambroneら29)が示したTLPDが66.3%に対して歯根破折起因の喪失歯が20.0%であったとする結果と,近似していた。メインテナンスケアを受けている,20~65歳の一般成人を対象とした研究では,歯の喪失理由として最も多かったのは歯根破折であり(62.4%),TLPD(5.2%)やう蝕(6.9%)を大きく上回っていた54)。本研究結果とも一致するが,歯周病があっても軽度で,適切なメインテナンスサポートケアを受けていた場合には,相対的に歯根破折による歯の喪失割合は高くなると推察される。
上述のAxelssonら54)の報告では,メタルポストあるいはスクリューポストで修復された歯内治療歯の歯根破折が,歯の喪失理由の最も主たるものであったと報告されている。本研究対象者においても,垂直性の歯根破折はそのほとんどが根管内にポストコアで維持を求めた既根充歯に生じていた(既根充歯27歯中23歯)。歯周炎患者の現在歯数が減少すると残存歯における咬合負担が増加し,口腔内で咬合力に対する機械的影響を受けやすい根管内ポストを有する歯にとっては喪失リスクが高まってしまうと推測される。
歯根破折を起こした歯に生じていた歯槽骨吸収量は歯根長を基準にすると,ステージII被験者,ステージIII被験者,およびステージIV被験者では,それぞれ17.0±9.7%(n=5),25.3±16.8%(n=18)および30.0±14.1%(n=6)であり,ステージが上位にある被験者では歯槽骨レベルが低くなる傾向があるものの,有意差は認めなかった(p=0.38)。そして,全体的に歯根破折が歯槽骨レベルの比較的高い歯で生じていたことがうかがわれる。
その一方で,歯周炎の進行に伴い行った歯周治療に関連したと考えられる歯根破折症例,すなわちヘミセクションや歯根分離術を行った後で生じた歯根破折症例は,2例のみであった。一般成人を対象とした研究54)において,歯の喪失理由の最たるものは歯根破折であったこと,多変量解析によって,歯根破折が歯周炎新分類との関連を有さず,グレードC被験者よりも,むしろグレードB被験者での歯根破折割合が高かったこと,および歯槽骨レベルの比較的高い歯で歯根破折が生じていたこと,などを勘案すると,歯根破折の多くは歯周病進行との関連性が低いと考えられた。
歯周炎進行歯に咬合負担が生じると通常は歯根膜腔の拡大や動揺という症状を呈するために,咬合調整や固定処置を施して対応する。また歯の動揺は,歯根破折という,機械的な歯質の破壊を避けるための生体の対応という側面もある。すなわち,歯周炎が進行して,動揺が生じている歯の歯根破折は生じにくくなっていると推察される。多変量解析の結果からは,TLPDはメインテナンス開始時の現在歯数と関連性が認められていない。メインテナンス期間中では,咬合性外傷への対応をおこなうことが,TLPD抑制につながっているのであろう。
歯根破折歯29歯のうち24歯は初診時に既に補綴処置がなされていた歯であった。アクティブな歯周治療前に施された補綴処置は,アクティブな歯周治療中やメインテナンス期間中の補綴処置歯より予後が不良であると述べられている25)。太く長いポストコアを有して,歯根破折が生じる恐れがあると初診時に判断されても,その歯根破折リスクを低減させる対応は困難なことが多い。また,ポストコア処置歯における歯根破折の併発は3%と報告されている62)が,本研究では処置歯の母数を調査していないので,ポストコア施術歯の破折症例が過去の報告と比較して多いのかどうかは明確でない。
口腔機能回復治療の処置内容はメインテナンス期間中の予後に影響を与えると考えられる63)。欠損補綴は,可撤性よりも固定性の欠損補綴の方が,より良好な予後が得られる63)。口腔機能回復治療に際して,当該施設ではインプラント処置を行っていないが,治療の選択肢の一つとして患者にインプラント処置についての説明は行った。患者が口腔機能回復治療としてインプラント処置を選択し,他の施設ではあるがインプラント処置を受けた症例は6例存在した。そのうち2例ではその後のメインテナンス期間中に対合する歯に歯根破折を生じた。メインテナンス期間中の歯の喪失を防止するために,どのような症例でどのような口腔機能回復治療を行うべきかについては,本研究の調査対象ではないが,今後の研究においてエビデンスを持って方法論が提示される必要がある。
歯周病の進行に伴い根面が露出すると,根面う蝕が生じやすくなる64,65)。Ravaldら35)はメインテナンス期のTLOAに占めるTLPD割合が72.5%であったのに対し,う蝕が原因の喪失歯は13.2%と報告し,Martinez-Cauntら34)はそれぞれ58.9%と19.1%であると報告している。あるいはCarnevaleら30)は,それぞれ30%と10%と報告している。これらの報告に対して,本研究におけるメインテナンス期のう蝕原因の喪失歯割合は,やや低く7.6%であった(TLPD割合は72.1%)。
さらに,高齢者ではう蝕による抜歯が多くなる66)が,今回の研究ではう蝕起因で歯を喪失した被験者の年齢は52.0±11.3歳であり,必ずしも高齢者とは言えなかった。
初診時あるいはアクティブな歯周治療期に我々が抜歯適応の診断を下しても,全ての患者がそれを受け入れるわけではなかった。予後が見込めず,その歯を保存することが患者にはメリットよりもデメリットの方が大きいと判断しての抜歯判断ではあるが,その歯を抜歯しなかった場合に実際にどれほどの期間保存されうるのかについて,抜歯処置を行った上で,その予後を確認するすべを我々は持たない。本研究対象には,抜歯の方針を提示してもこれを受諾しなかった患者症例も含まれており,やむなく抜歯処置を行わず,可及的保存の方針でメインテナンス処置を行った。そのような歯のうち最終的に観察期間内に自然脱落,あるいは患者の同意が得られて抜歯に至った歯は,23歯(ステージIII被験者9人,ステージIV被験者5人)であった。これらの歯が保存された期間は38.1±31.2ヶ月(3~103ヶ月)であった。このような対応が患者のQOLを高めたのか否かについて,調査は行えていない。骨吸収が80%以上あっても20年以上の保存が可能であったとする報告7)や,予後不良歯に対し早期の抜歯を行ってインプラント処置をすることに対して批判的な意見もなされており,抜歯の判断は依然として容易でないことが示唆されている63)。
治療が奏功して,管理を複雑性にしていた要因が除去されても,元々のステージ診断を決めることになった管理の複雑性要因は,メインテナンスケアサポートにおいても常に考慮されるべきである。このような観点から,歯周炎新分類では,最初に決められたステージ分類は原則低位に移行することはない。一方,グレード診断については,治療後あるいはメインテナンス時の再評価に変更が生じることがある。長期メインテナンス期にグレード判定を再度行った場合には,その評価がどのように変遷しているのか,さらには歯の喪失を指標とした予後といかなる関連性を有するのか,メインテナンス期の歯周炎患者と実際に日々対峙する臨床医にとって,その探究は必要と考えられる。
歯周炎新分類は,メインテナンス期のTLOAおよびTLPDと強い関連性を有するが,TLORとは関連しないことが明らかとなった。
本論文の作成にあたって,参考文献収集についてご協力を頂いた,大阪大学大学院歯学研究科歯質歯内科前園葉月先生に深謝申し上げます。
今回の論文に関連して,開示すべき利益相反状態はありません。