1984 年 26 巻 1 号 p. 101-109
歯周組織破壊機構に抗体依存性細胞障害 (ADCC) が関与している可能性を調べるために, ヒト歯肉由来線維芽様細胞を標的細胞とするADCCの in vitro の実験を行い, さらに歯周炎患者の歯肉組織浸潤細胞中にK細胞が存在するかどうか検索した。被検標的細胞にEikenella corrodens を付着させた後, 本菌に対するウサギ抗血清およびヒト末梢血リンパ球 (PBL) と反応させると, ADCCによる細胞破壊を認めた。酵素処理して得たヒト炎症歯肉組織の浸潤細胞中には, IgG-EAロゼット法によりFcレセプター (FcR) 保有細胞を同定できたが, ヒツジ赤血球に対するADCC活性は認められなかった。ラット実験的炎症巣由来の浸潤細胞および陽性対照群のヒトPBLは, ともに明確なADCC活性を認めた。しかしこれらの細胞を酵素処理するとADCCの発現を認めなかった。なおヒトPBLにおいて, 酵素処理前後でFcR保有細胞数の変動はなかった。