1986 年 28 巻 1 号 p. 131-143
ブロック状のhydroxyapatite (HAP-B) を歯周治療に応用する目的で, ラット大腿直筋内埋入試験とビーグル犬歯槽骨内埋入試験を行なった。歯槽骨内埋入試験は, 実験に先立ち, 両側P2, P4を抜去し, 3ヵ月後P3, M1近心歯槽骨に3×5×5mmの人工的骨欠損を作製して, M1近心にはHAP-Bを填塞した。その結果, 6ヵ月の経過を通して, 大腿直筋内のHAPは線維性被膜によって被包されており, 周囲筋組織や全身主要臓器に障害像はみられなかった。歯槽骨内埋入試験の対照例の骨修復は, 近遠心的中央部の陥凹した状態で, 術後3ヵ月目にほぼ終了していた。一方HAP-B填塞例の骨修復は, HAPが骨内に埋入された状態で進み, 対照例にみられた陥凹は存在しなかった。術後3ヵ月目においても, 骨内に埋入されていないHAPが存在したが, HAP周囲には間葉系細胞の密度が高く, 類骨形成も認められた。これらのことより, 今回使用したHAP-Bは高い生体親和性と骨伝導能を有し, 有効な骨移植材となりうると考えられた。