1988 年 30 巻 4 号 p. 1040-1046
中等度から重度の成人性歯周炎患者8例の末梢血リンパ球subsetを, 初診時と約1年間の治療経過後の2回にわたって検索した。初診時におけるOKT-8陽性subset, すなわちsuppressor/cytotoxic T-cell陽性率は健常者と比較して著しい低下を示したのに対し, OKT-3, OKT-4, Leu-12陽性の各subsetには差異は認められなかった。OKT-8陽性subsetの低下に伴いOKT-4/OKT-8比は8例中5例で上昇が見られた。末梢血における本傾向は, 局所症状に改善が見られた約1年後においても変ることはなく, 成人性歯周炎患者末梢血において持続的なsuppressor/ cytotoxic T-cell subsetの低下が存在し, これがOKT-4/OKT-8比の異常上昇の要因となっていることが窺われた。また, この傾向は局所症状の変化とは何等相関性を示すことのないことから, 同subsetの低下が歯周炎の発症と病機進展の背後に素因として存在する可能性が示唆された。