日本歯周病学会会誌
Online ISSN : 1880-408X
Print ISSN : 0385-0110
ISSN-L : 0385-0110
歯肉骨膜血管網の再認識と創傷治癒にかかわる形態変化の観察
岩井 勝美
著者情報
ジャーナル フリー

1989 年 31 巻 2 号 p. 343-359

詳細
抄録

多くの歯周外科処置は, 骨膜の血管新生能, 線維形成能に基づいて行われ, 骨膜への対応が臨床的にもその処置の成否を左右すると考えられている。本研究の目的は, 歯周領域における骨膜の微細血管構築を再認識し, 創傷治癒にかかわる骨膜血管網の役割, ならびに修復過程における血管動態を血管鋳型標本を用いて詳細に観察することにある。本研究においては, 健康な歯周組織を有する雑種成犬30頭を用い, 上顎左側の付着歯肉, 歯槽粘膜領域を対照領域とし, 骨膜血管網の基本形態を観察した。さらに上顎右側付着歯肉の一定の位置を実験領域として, 6×6mmの歯肉を部分層で剥離除去し, その修復過程を術後5, 7, 14, 21, 28日の各期間に観察した。その結果, 歯肉と歯槽粘膜における組織構造の相違が骨膜の血管網形態においても認められ, 骨膜血管網からも歯肉・歯槽粘膜境が容易に判断できた。また, 歯肉が部分層で除去された際, 歯肉骨膜血管網は歯肉再生ならびに骨の吸収, 添加に伴う旺盛な血管新生の基盤として働くことが明らかになった。

著者関連情報
© 特定非営利活動法人日本歯周病学会
次の記事
feedback
Top