1989 年 31 巻 2 号 p. 724-735
今回われわれは, 急性壊死性潰瘍性歯肉炎の3例を経験し, その臨床所見, 光顕ならびに電顕所見, 治療法およびその経過について観察した結果つぎのような結論を得た。すなわち, 臨床的には, 3症例ともに, 歯肉に潰瘍形成が認められ, 症例1のみその部が陥没していた。一方, 光顕所見では, 3症例ともに, 歯肉組織に潰瘍形成があり, その表面にはフィブリンの析出, 好中球の浸潤が観察できた。また, 潰瘍部より深部の結合組織には血管の拡張や好中球の浸潤がみられた, 他方, 電顕所見では, 3症例ともに, 潰瘍面には多くの微生物, フィブリン, cell debrisなどが存在し, また, 上皮組織の細胞間隙は拡大していた。さらに, 治療法としては, プラークコントロールを中心とする積極的な局所療法を行い, 臨床的にも, 病理組織学的にもその効果が明らかに認められた。