日本歯周病学会会誌
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顆粒状歯肉炎を初発症状とするWegener肉芽腫症の病態の転帰およびその発症機構に関する免疫学的考察
沼部 幸博岡部 俊秀長弘 謙樹鴨井 久一吉成 伯夫山田 隆久園山 昇
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1992 年 34 巻 4 号 p. 916-928

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抄録

日本歯科大学歯学部附属病院歯周病科および口腔外科において経験した, 極めて希な特異的歯肉炎が初発症状と考えられる全般性Wegener肉芽腫症 (Wegener's Granulomatosis) の症例 (43歳男性) に関し, 特に発症初期における歯周組織の状態, 病態の推移に関して報告すると共に, 免疫学的見地からその発症機構について考察を加えた。
本症例で特徴的なのは, (1) 顆粒状歯肉炎が全ての病的変化に先だち, それが初発症状であると考えられたこと, (2) 電撃的かつ激烈な歯肉および口腔粘膜の壊死の進行, (3) 病変の進行に伴う急速な歯牙の脱落, (4) 急激な全身の臓器への肉芽腫性病変および血管炎の波及, (5) T細胞の比率の減少, B細胞の比率の上昇, (6) NK細胞の比率の上昇等であった。
以上のことより, 本症例の発症の背景因子として歯周疾患があり, 未知の因子の介在により自己免疫系が賦活されたことで急速かつ高度な歯周組織破壊が進み, 局所から全身に血管炎および壊死性肉芽腫性病変が波及し, 死の転帰をとったものと考えられた。

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