1997 年 39 巻 1 号 p. 23-30
歯肉溝へのプラーク堆積に次ぐ歯肉炎の初発部位とされている接合上皮に由来する細胞の分離, 培養が確立された。本実験の目的はこの接合上皮細胞における好中球走化性因子のひとつであるインターロイキン-8 (IL-8) および, 好中球由来蛋白分解酵素を阻害するsecretory leukocyte protease inhibitor (SLPI) の産生量を測定し, 歯肉角化上皮細胞 (以下; 角化上皮細胞) との性状の差異を明らかにすることである。それぞれの細胞を48穴プレートに播種し, インターロイキンー1α (IL-1α), 腫瘍壊死因子 (TNF-α) と共にそれぞれ培養した後, 上清を採取し, 上清中のIL-8およびSLPIをELISA systemにて, 測定した。結果として接合上皮細胞は無刺激およびIL-1α (0.1, 10ng/ml) 刺激下において, 角化上皮細胞よりも有意に高いIL-8産生を示した。SLPI産生量に関しても接合上皮細胞のほうがIL-1α (0.1, 1, 10ng/ml), TNF-α (100ng/ml) 刺激下において有意に高い値を示した。これらの結果は, 歯周破壊接の初発部位とされる接合上皮自体が好中球の歯肉溝への遊走を誘導し, また好中球由来蛋白分解酵素による歯周組織破壊に対して防御的に働いていることを示唆するものである。