日本歯周病学会会誌
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歯周治療中に生じた象牙質知覚過敏症に対するNd: YAGレーザー照射による疼痛緩和効果
小林 一行山口 博康熊井 麻子田中 麻起櫻庭 栄一野村 典生中村 治郎新井 高
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1999 年 41 巻 2 号 p. 180-187

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抄録

日常臨床の中で象牙質知覚過敏症は, 歯周治療中に発症することが多い。特に歯ブラシなどによる機械的刺激に対して起こる痙痛は, 口腔清掃状態を悪化させ, 歯周炎を再発させてしまう可能性がある。したがって, 疼痛緩和効果があるNd: YAGレーザーを照射することで通常の口腔清掃を早期に行えるようにすることは歯周治療を進める上で有効な処置と考えられる。そこで今回, 歯周治療中に生じた象牙質知覚過敏症に対するNd: YAGレーザー照射による除痛効果を調べる目的で, 患歯の歯肉歯槽粘膜に墨汁を塗布し照射を行う方法を用いて, その有効性を歯肉退縮量の程度別, 歯種別に比較検討した。さらに, 歯肉歯槽粘膜表面への影響の観察も行った。被験歯は歯周治療中に知覚過敏を訴えた患者の100歯とし, レーザー照射条件は15pps, 1.5W, 60秒間とした。痛みの評価はエアーおよびブラッシングによる誘発痛の程度をvisual analogue scale (VAS) を用いて判定した。また, 歯肉歯槽粘膜表面への影響の観察は, 術前, 術直後の口腔内写真およびレーザー顕微鏡観察から検討した。
Nd: YAGレーザー照射による疼痛緩和は歯肉退縮量が3mmまでの症例において奏功する傾向を示し, 前歯部は臼歯部と比較して疼痛緩和が有意に奏功した (p<0.001)。また, Nd: YAGレーザー照射による歯肉歯槽粘膜表面への影響は認められなかった。以上のことからNd: YAGレーザー照射は歯周治療中に生じた象牙質知覚過敏症に有効であると考えられる。

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