日本歯周病学会会誌
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細胞外基質がヒト歯肉上皮細胞の細胞機能に及ぼす作用
田村 太一
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2001 年 43 巻 3 号 p. 217-226

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抄録

細胞外基質 (ECM) は細胞の分化, 増殖, 遊走などの細胞機能を制御することにより, 歯周炎の進行や治癒において重要な役割を演じていると考えられている。そこで今回, 3種のECM, osteopontin (OP), laminin (LM), fibronectin (FN) がヒト歯肉上皮細胞 (HGE) の接着, 増殖, 遊走, 接着斑構成タンパク質であるfocal adhesion kinase (FAK) およびpaxillinの発現およびそのチロシンリン酸化に及ぼす作用を比較検討した。HGEを各ECMでコートした培養ディッシュ上で培養したところ, FN上では細胞接着と遊走が, OP上では細胞増殖が有意に促進され, LM上では細胞遊走が抑制傾向を示していた。また, FAKとpaxillinの発現はECM上で増加する傾向を示し, 上にFN上ではFAKとpaxillinが, OP上ではFAKが顕著に発現促進されていた。また, FAKのチロシンリン酸化はFN上で, 一方paxillinのチロシンリン酸化はLM上およびFN上で著しく促進されていた。本研究の結果は, FNとOPはそれぞれHGEの細胞接着と遊走あるいは細胞増殖を促進することにより, 歯周ポケット形成や歯周炎の治癒において重要な役割を担っている可能性があること, またFNの細胞機能促進作用には接着斑構成タンパク質のチロシンリン酸化が関与している可能性があることを示唆している。

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