日本歯周病学会会誌
Online ISSN : 1880-408X
Print ISSN : 0385-0110
ISSN-L : 0385-0110
固定法を用いた動揺歯の早期接触検出法
安蘓 恭子村岡 宏祐内藤 徹横田 誠
著者情報
ジャーナル フリー

2003 年 45 巻 2 号 p. 171-179

詳細
抄録

本研究は歯周疾患罹患動揺歯において, 病態生理を考慮した早期接触検出法の確立を目的としている。そこで, 当教室の一連の研究から, 歯周疾患罹患動揺歯は, 歯の挺出, 移動をきたしその結果, 咬合時に早期接触が生じるという仮説を設定した。今回, 動揺歯を含む臼歯部に固定を行い, 咬頭嵌合位での咬合状態を感圧測定シート (デンタルプレスケール) により, 固定前後における各々の歯の咬合力, 咬合面積を測定した。さらに咬合力負担率, 咬合接触面積率の定量分析も行ない, それぞれの差 (固定後一固定前) と動揺度の関係を検討した。動揺度はミラーの分類に従い, 0度, 1度を動揺度無/軽度群, 2度, 3度を動揺度重度群に分類した。
その結果,
1. 固定前後の咬合力の差は, 動揺度無/軽度群より動揺度重度群で有意に大きな値を示した (p<0.05)。
2. 固定前後の咬合面積の差は, 統計学的に有意差は認めないものの, 動揺度無/軽度群より動揺度重度群で大きな値を示す傾向があった。
3. 固定前後の咬合力負担率の差は, 動揺度無/軽度群より動揺度重度群で有意に大きな値を示した (p<0. 05)。
4. 固定前後の咬合接触面積率の差は, 動揺度無/軽度群より動揺度重度群で有意に大きな値を示した (p< 0. 05)。
以上より, 歯周疾患罹患動揺歯において, 固定を用い診断することで, 歯の挺出, 移動に伴う早期接触による外傷性咬合を検知できる可能性が示唆された。

著者関連情報
© 特定非営利活動法人日本歯周病学会
前の記事 次の記事
feedback
Top