Gray(1970, 1982, 1987)の強化感受性理論は,罰の回避の感受性と報酬への接近の感受性という2つの基礎的な次元の個人差によって,人間行動を記述する気質モデルである。本研究では,罰の回避の感受性と報酬の接近の感受性を測定する3尺度を含む質問紙調査を実施し,各尺度間の相関及びGrayの気質モデルとEysenckの気質モデル(神経症傾向(N)と外向性(E))との関係を検討するために,相関分析,共分散構造分析による検討を行った。その結果,罰の回避の感受性と報酬への接近の感受性は,(1)前者は因子として十分なまとまりを持つが後者はやや不十分であること,(2)お互いに相関はなく,両者は独立に機能し得ること,(3)前者はNと正の相関,Eと負の相関,後者はN・Eとも正の相関を持つことが確認され,また,Grayの気質モデルの全体的な構造は,単独の尺度のみを用いたときよりも,3尺度を組み合わせることによって,より理論的な想定に沿った測定が行えることが示唆された。