2011 年 19 巻 3 号 p. 233-244
本研究は,楽観性と,ポジティブ志向(現実のポジティブな面を強調するような,必ずしも現実に基礎をおいていない認知),および主観的幸福感の関連を検討することを目的として行われた。大学生337名を対象に,楽観性尺度,主観的幸福感尺度,ポジティブ志向尺度から成る質問紙調査を実施した。因子分析の結果,楽観性,主観的幸福感は,両者とも1因子構造であること,およびポジティブ志向は,ポジティブに認知する際の基準をどこに置くかの違いによって,「上方志向」と「平静維持」の2因子に分かれることが明らかになった。楽観性がポジティブ志向の各因子を経て主観的幸福感に至るモデルを構成し,共分散構造分析によって検討したところ,楽観性は,「上方志向」および「平静維持」と正の関連がみられた。また,主観的幸福感は,楽観性および「上方志向」と正の関連がみられたが,「平静維持」との関連はみられなかった。