パーソナリティ研究
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原著
中高年期における感情調整の発達に関する横断的研究
年齢,身体機能,感情調整,精神的健康の関係に注目して
中川 威権藤 恭之石岡 良子田渕 恵増井 幸恵呉田 陽一高山 緑冨澤 公子高橋 龍太郎
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2013 年 22 巻 1 号 p. 13-22

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抄録

多くの高齢者が身体機能の低下を経験する一方,well-beingは比較的高く維持されることが知られてきた。この一見矛盾した反応への説明のひとつとして,人は感情状態を調整するように動機づけられ,感情調整をできるようになるという仮説が示されている。本研究では,中高齢期における感情調整の発達が,精神的健康に与える身体機能の低下の影響を打ち消すか検討することを目的とした。調査対象者は地域在住者1,047名(年齢範囲:55~105歳)であった。共分散構造モデルでは,年齢が高くなると身体機能は低下し,感情調整を抑制していた一方,身体機能の影響を統制すれば,年齢が高くなると感情調整は高まり,感情調整は精神的健康と肯定的な関連を示した。以上の結果,高齢者は,精神的健康に否定的な影響を与える身体機能の低下を経験しても,加齢に伴う感情調整の発達によって精神的健康を維持するという仮説が支持された。

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© 2013 日本パーソナリティ心理学会
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