2020 年 29 巻 1 号 p. 34-45
本研究の目的は,大学生のアイデンティティを中核的同一性と心理社会的自己同一性に分類し,レジリエンスとの関連について構造方程式モデリングによって検討することであった。分析の結果,アイデンティティとレジリエンスの関連は相関関係でも因果関係でも説明ができるが,因果関係を想定した場合,レジリエンスの一要素である「肯定的な未来志向」因子を除外する必要があることが示された。また,レジリエンスからアイデンティティへの影響はアイデンティティの層によって異なり,心理社会的自己同一性では非常に強く,中核的同一性ではある程度のものであることが示された。このことから,レジリエンス獲得を目指す心理教育はアイデンティティ形成に役立つものの,実存的な問題に対しては別のアプローチも必要となる可能性が見出された。