パーソナリティ研究
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加害型TKSとSADの予測因子――BIS/BASおよび過剰適応に注目した探索研究
下村 寛治西口 雄基石垣 琢麿
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2021 年 29 巻 3 号 p. 150-158

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抄録

加害型対人恐怖症(加害型TKS)とは,対人恐怖症のうち,自分が他者を害していると確信して対人場面を恐れるサブタイプである。このサブタイプは,社交不安症(SAD)と類似した病態を示しながらも,恐怖が他者指向であるという違いが指摘されてきた。しかし,加害型TKSとSADに特有の症状を個人のどのような要素が予測するのかは検討されてこなかった。そこで本研究では,BIS/BAS (behavioral inhibition/activation system)および過剰適応傾向に着目し,これらの変数がそれぞれに特有の予測要因となるかを検討した。大学生274名を対象に質問紙調査を実施し,対人恐怖症傾向,社交不安症傾向,BIS/BAS,過剰適応傾向,抑うつ傾向を測定した。重回帰分析の結果,BIS/BASはSADに特有の予測要因である一方,過剰適応傾向は加害型TKSに特有の予測要因であることが示唆された。これは加害型TKSとSADがそれぞれ特有の心理的メカニズムを持つ可能性を示唆する。

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© 2021 日本パーソナリティ心理学会
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