発達科学分野において,加齢に伴い感情がどのように変化するかが記述されてきた。ほとんどの研究は,年間隔といった長期的な個人内変化に着目してきた。しかし,日間隔といった短期的な個人内変動に関する知見は限られている。本研究では,若年者19名(19–29歳),高齢者21名(82–84歳)を対象に日誌調査を行い,感情の個人内変動の年齢差を検討した。調査参加者は,ポジティブ感情とネガティブ感情を経験した程度を7日間毎晩回答した。感情の個人内変動の指標には,変動性(個人内標準偏差),慣性(自己相関),不安定性(平均二乗逐次差)の3つを用いた。高齢者では,若年者に比べて,変動性と不安定性は小さかった。また,高齢者でのみ,ポジティブ感情の慣性が高いとネガティブ感情の平均的な程度が高かった。今後,感情の個人内変動の年齢差のメカニズムを検討すべきだろう。