本研究では,向社会的行動の動機づけ(向社会的動機づけ)について中学生を対象とした尺度の開発を目的としている。従来,向社会的行動はその実行によりポジティブな結果をもたらすものとして注目されているが,その功名は動機づけによって支えられている部分が大きいと推察される。自己決定理論に依拠し,向社会的動機づけを自律性の観点から捉えるべく,計1,017名の中学生に自記式調査を実施した。先行研究を参考に作成した項目群について,因子分析を行った結果,日本の中学生が認知する向社会的動機づけとして「同一化的調整」と「統制的調整」の2因子が抽出された。このことから,中学生の向社会的動機づけにおいては外的調整と取り入れ的調整が未分化であり,統制的動機づけという1つのまとまりとして認知されていることが示唆された。その後,尺度の信頼性と妥当性を確認すると共に,向社会的動機づけの性差について検討した。