2022 年 30 巻 3 号 p. 186-198
2×2達成目標モデルにおいて,課題要求の達成を目指す習得接近目標と,課題要求の達成失敗の回避を目指す習得回避目標は,行動指標のどのような側面に影響がみられるか明確でなかった。本研究の目的は,ウィスコンシンカード分類課題を用いて,習得回避目標の影響が,誤答後試行にのみ反応時間の遅延がみられるか明らかにすることであった。大学生および大学院生140名を対象に実験が実施された。達成目標は,教示によって習得回避目標,習得接近目標,遂行回避目標,統制の4条件が操作された。反応時間を従属変数とし,ex-Gaussian分布を仮定した一般化線形混合モデルによって,操作された達成目標と1試行前の正誤反応の及ぼす影響を検討した。その結果,習得回避目標条件においてのみ,1試行前が誤答だった場合に反応時間の遅れがみられ,習得接近目標条件,遂行目標条件および統制条件においてはこのような反応時間の遅れはみられなかった。