2022 年 31 巻 1 号 p. 39-51
本研究は,無気力への感情に着目し,縦断調査から一般学生におけるスチューデント・アパシー的な無気力の実態を検討した。3回の調査に参加した大学生121名が,意欲低下領域尺度,無気力感尺度,心のゆとり感尺度を含めた質問紙に回答した。条件付き潜在曲線モデルに基づく解析を行い,初回測定時の学業意欲低下から切片と傾きへの影響を検討した。切片では,心の充足・開放性と対他的ゆとりに負の影響があり,切迫・疲労感には影響がなかった。傾きでは,心の充足・開放性と切迫・疲労感どちらも学業意欲低下からの影響がなかった。つまり,学業への意欲低下は心のゆとりを減少させるが,ネガティブな感情は伴わないことが示された。ただし,意欲の低下はその後の心のゆとりの増減に影響しないことも明らかになり,スチューデント・アパシー的な無気力の特徴が見出された。今後,大学生の無気力に対して上記の特徴を踏まえた支援を検討すべきであろう。