パーソナリティ研究
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原著
向社会的な嘘の使用と抑うつの関連――友人関係の良好さを媒介要因とした適応的・非適応的機能の弁別
田口 恵也
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2022 年 31 巻 2 号 p. 102-111

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抄録

本研究は,利己的および向社会的な嘘の使用傾向が抑うつに与える直接的影響,および友人関係の良好さを介して与える間接的影響について検討した。大学生319名に調査を実施し,298名(男性143名,女性153名,その他2名;Mage=19.43, SD=2.67)を分析対象とした。媒介分析の結果,利己的な嘘の使用傾向は抑うつへの総合効果や直接効果,友人関係の良好さを介した間接効果を持たないこと,向社会的な嘘の使用傾向は,抑うつへの総合効果は持たないものの,友人関係の良好さを介して抑うつを低める負の間接効果,友人関係の良好さを統制すると抑うつを高める正の直接効果を持つことが示された。本研究の結果から,これまでポジティブな対人方略であるとみなされてきた向社会的な嘘が,精神的健康を悪化させるネガティブな効果も有することが示唆された。

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© 2022 日本パーソナリティ心理学会
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