2024 年 33 巻 3 号 p. 168-178
保守的な政治的志向性が厳罰傾向の頑健な予測因子であることは多数の先行研究によって示されてきた。そして,近年の研究では,政治的志向性と厳罰傾向の関連は道徳基盤によって媒介されることが示唆されている。しかし,この媒介関係がアメリカ以外の文化・社会でも見られるのかはこれまで検討されていない。そこで本研究は,この媒介関係が日本においても見られるのかを検討することを目的とした。256名の日本人成人から得られたデータを分析したところ,(a)連帯志向・個人志向の道徳基盤と政治的志向性および刑事司法に対する態度の相関は有意でないこと,そしてその結果として,(b)政治的志向性,道徳基盤,刑事司法に対する態度の間の媒介関係は確認されないことが示された。これらの知見は道徳基盤理論を適用する際には文化的・社会的文脈を考慮することが重要であることを示唆していると論じた。