物理教育
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高校物理において「原子物理」をどのように展開するか
藤田 喜一
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1967 年 15 巻 2 号 p. 62-66

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抄録

自然は美しい「統一」のもとにくりひろげられている.一見複雑に見える現象も「真理の糸」をたぐっていくと比較的容易にその内容が理解されるものである.さて高校で物理を教えていて最も不満を感じるのは,「原子物理編」である.なぜならば原子物理編には非常に重要な事象や概念が多くあるにかかわらず,高校物理では理論体系のもとに統一されていないからである.力学編などではニュートンの運動方程式,エネルギー保存則,運動量保存則など整然とした体系があり,古典物理として一応理論の統一がなされているのに比べ,原子物理編では短時間にいろいろの事象や概念が断片的に次から次へと羅列的に登場してくるような印象を受ける.原子物理全体をもっと整理し,新しい理論発見の必然性,関連性をまとめ統一した理論体系としてとらえ,個々の事象の位置づけをしたならば,もっとすっきりしたものになり授業においても生徒に目の輝きを促し,真理追求への喜びを味わせることもできるのではないだろうか.物理教育で最も大切なことは単なるエンサイクロペディア的知識の集積や事実の丸暗記ではなく,物理の見方や考え方を会得させ,創造の喜びを味わせ,そのプロセスを知らせることである.すなわち,理論体系一物理の基本原理を用いた考え方や理論の展開のし方を中心にして具体的事象をその中にとらえて展開すべきではないだろうか.

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© 1967 日本物理教育学会
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