赤外線の吸収を用いて,CT(コンピュータ断層撮影)で外からは見えない内部の構造が求まる仕組みについて学べる実験教材の開発を行った。学生実験を 6 年間実施し,パズル的要素と見た目で操作がわかりやすい点から,物理を高校で履修していない学生にも本実験は受け入れやすいという結果を得た。2 方向だけの測定から内部構造を決めるためには,あらかじめ適切な試料の準備が必要であり,さまざまな試料を用意する方法の検討も行っている。
本稿はジャスト・イン・タイム教授法(JiTT:Just in Time Teaching)を用いて高校「物理基礎」の授業を 1 年間行った報告である。JiTT は Web を用いた事前課題と教室での対面授業を組み合わせた教授法であり,相互作用型授業の 1 つとして米国の物理教育界では広く知られている。生徒一人一人に ICT 機器が行き渡った今,JiTT は日本の高校物理でも実施可能となった。本稿ではその方法を紹介し,効果について議論する。
プランク定数 h=6.63×10-34Js は量子力学において最も重要な定数である。光電効果を用いてプランク定数を求めることができるが,LED の閾値電圧と発光ピーク振動数からも求めることができる。光電効果では電子を取り出すのに必要なエネルギー仕事関数 W を導けるが,LED の場合も W のような定数 Ws を導出できる。 しかしながらこの Ws の起源について理解がしにくい。PN 接合を作る際のバンド整合を基にこの Ws について議論を行った。その結果 Ws はエネルギーギャップと化学ポテンシャルの差から生じることがわかった。
自作した実験装置を授業で活用し,装置改良に関する提案を募って装置に反映させるという活動を長年続けてきた。この形態で授業を行うと,より関心を持って授業に臨む生徒が増えるという好循環が生まれる。装置の製作は「後輩のために実用的な装置を作って残そう!」をテーマとして,科学部員と共に行っている。生徒と協調して装置作りに取り組む時間はこの上なく充実している。以下では今回新たに製作した実用性の高い水面波実験装置を紹介する。
現在の高校の教科書では,「慣性の法則」は,「外部から力を受けないか,あるいは外部から受ける力がつりあっている(合力が 0の)場合には,静止している物体はいつまでも静止を続け,運動している物体は等速直線運動を続ける」のように説明される。この中で,「あるいは外部から受ける力がつりあっている(合力が 0の)場合には」の部分は,「慣性の法則」から削除するのが望ましいと筆者は考える。「慣性の法則」に対する解釈,先行研究,教科書における力学の体系について考察し,教科書に関していくつかの提案を行う。
高校物理では,直線状の縦波の変位をグラフ化して,横波になぞらえて説明する。このグラフが横波表示である。こうすると,例えば直線状の縦波の固定端反射では,入射波と反射波の位相が半波長分ずれて横波と一致する。一方,疎密波の固定端反射では位相のずれが生じないから,横波表示の山・谷と疎密波の疎・密を共に縦波の位相と考えるならつじつまが合わない。これは,横波表示が縦波の位相を正しく記述していないことの証拠である。本稿では,縦波の横波表示は媒質の変位振動の座標成分のグラフにすぎず,その適用には限界があることを指摘する。
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