高校物理の教科書の「鏡」の分野において,光の進み方の具体的な観察方法や生徒実験が紹介されておらず,そ れに適した鏡も市販されていない。そこで,正確な焦点と中心が明示されている凹面鏡・凸面鏡を製作し,基礎事 項である光の進み方を実際に自分の目で体験しながら確認できるようにし,その製作した鏡を利用して,鏡やレン ズを組み合わせた生徒実験も併せて開発した。実験結果は,理論通りの十分妥当な結果が得られた。レンズと鏡 の学習後のまとめとして実施できたり,探究的な活動としても取り組めることが十分可能であるので紹介する。
安価なソフトウェア無線機(SDR)を用いた人工衛星電波受信実験を,高校物理でのドップラー効果学習の教 材として提案する。SDRで取得した受信周波数のドップラーシフトから,衛星が最高仰角90°で通過すると近 似すれば,高校生が演習問題として扱える範囲で衛星の速さを求められる。この近似による誤差も検討した。高 校生を対象とした授業実践により,この教材が,授業内での実施が現実的であり,学習内容の理解,理科の有用 感の向上,誤差・有効数字への気づきを促すことが示唆された。
曲率が場所ごとに変化する任意の平面内曲線に沿って運動する物体の運動方程式を,加速度の大きさに関する 三平方の定理を使うことで比較的容易に導出した。導出過程において『曲率』は避けて通れなかったが,その定 義や意味するところは高校生でも充分理解可能である。また,導出された運動方程式を使って鉛直面内のサイク ロイドに沿って滑り下りる物体の解析を行い,サイクロイドを離れる位置の高さが出発点の高さの半分になるこ とも見出した。曲面から離れない例として逆正接関数を挙げ,証明が難解となってしまったものの,何とか高校 生への説明に耐えうるものとなったと考える。
教科書では縦波の変位を横波表示で説明するが,例外なく,進む向きとは無関係に右向きの変位を正にしてい る。縦波は疎密波でもあるが,この横波表示では,変位の山・谷と密度の疎・密の位相の順序が進む向きによっ て異なり一意的でない。音の単元では,音源から周囲に広がる音波を波面の広がりで図示しているが,原理的に は横波表示で空間に広がる縦波は記述できず,曲面状の波面はありえないのに,図中の波面や波線が何を表すの かについては説明がない。以上は例示に過ぎないが,教科書のわかりにくさや誤りが,学習指導要領の記述と関 わっていることを指摘する。
高校在職時は自然科学系の部活動を指導してきた。最も困難だったのは,探究のテーマを見つけることであっ た。それでも,生徒の興味関心や性格などの特性と,たまたまテーマがマッチすると,興味深い結果に結びつく こともあった。その中でもとくに印象深かった探究の過程を報告する。
本稿では,総合的な探究の時間を中心とした探究活動の実践について報告する。指導した生徒が第68回日本 学生科学賞で環境大臣賞を受賞し,ISEF2025に派遣された。ISEF派遣に至るまでの研究活動の指導をもとに, これまで筆者が取り組んできた探究(研究)活動の指導に関して効果的であった点や課題点など様々な経験を共 有し,総合的な探究の時間や物理の授業における探究(研究)活動の可能性について議論することができればと 考えている。また国際バカロレアにおける個人研究,課題論文についても紹介する。先生方の探究活動の指導の 参考になれば幸いである。
筆者が高校理科部顧問として18年間で,指導上工夫したことを報告する。生徒の純粋な興味と直感的推理を 原点とし,高校の設備・予算内での研究を重視して指導している。「頭よりも手を動かせ」の指導で生徒の主体的 工夫を引き出し,教育的側面に重きを置いたテーマ設定と研究過程の指導について述べる。
我々の科学部では,自作した微小重力装置と重力可変装置を使用して,様々な研究を続けてきた。決して恵ま れていない環境のなかであげてきた成果は,研究における「誰もやっていないことをする。そのことに失敗はな い」という信念と,学会やサイエンスフェスタでのプレゼンテーションで育まれた他者理解力と自己肯定感であ る。研究成果や受賞を目指したのではなく,科学を「知識として学ぶ」だけでなく,「人として成長するために学 ぶ」という実践が,学校形態を超えて有効な教育であると感じている。
研究活動指導は,教員の経験や成功事例に依存しがちである。本稿では,筆者が15年以上にわたり継続して きた研究活動指導を,「観察」を起点とする指導思想のもとに整理する。教科書的理解と異なる現象や結果を丁寧 に観察し,そこから生じた疑問を検証する過程を通して,生徒は問いを形成してきた。レンズによる副実像の研 究に代表されるように,光学現象の再検討が教科書的理解の再構成へとつながった事例を踏まえ,現在の研究を 例に,観測と再現実験を往還する指導の実際を示し,若手教員に再現可能な研究活動指導のモデルを提示する。
すでにアカウントをお持ちの場合 サインインはこちら