抄録
周知のように,こまの定常歳差運動は,こまに働く遠心力,歳差運動と自転の複合効果としてのコリオリの力と重力の3つのモーメントが,心棒のある傾角において釣合った状態として定義される.特に,遠心力が無視できる,いわゆる遅い歳差運動では,コリオリの力と重力とのモーメントが釣合う.この現象を利用し,しかもその場合に釣合いにおける心棒の傾角が理論的に不定になることを避けるため,質量の配置に多少の変更を加えることによって,コリオリの力と重力の間のモーメントの比較を,回転体の軸の向きによって視覚化する装置を考案した.すなわち,D.C.モーターの重心を通りモーター軸に垂直な直線に沿う支柱を,モーター壁に立て,この支柱上の適当な位置に重錘を固定した.一方,重心を通りモータ一軸と支柱の両方に垂直な軸線を持つ一対の軸受けを,モーター壁に取付けた.この軸受けによってモーターを,水平ターンテーブル上適当な高さに,鉛直面内で旋回できるように支持する.水平ターンテーブルを一定速度で回転させておいて,モーターを駆動すると,モーター電機子に,その角速度とターンテーブル角速度との積に比例したコリオリの力のモーメントが働き,これが軸のある傾角で,重錘に働く重力のモーメントと釣合う.モーター印加電圧を変えると,電機子心軸の傾角が,そのcotが電機子角速度に比例するように変化する.またその比例係数が,ターンテーブル角速度に比例し,また重錘の質量と重心からの距離に反比例して変わることも確かめられた.