物理教育
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OHP用「熱現象及び熱力学法則の分子運動に基づく演示実験説明器」の開発
五十嵐 靖則
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1981 年 29 巻 3 号 p. 229-232

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抄録

熱は温度差が原因で物体間に出入りするエネルギーであるといわれるが,その時どのような形で熱は高温物体から低温物体へ受け渡されていくのか,そして物体の温度が高くなるということはどういうことなのか,等を物質を構成している「原子や分子の運動」と関連させて,熱現象や熱力学法則を「分子運動モデル」によって動的に,視覚的に捉えさせる教具を開発したので紹介したい.分子モデル(鋼球)が飛びかう空間を薄い隔膜で2分し,熱源(高温物体)の部分と被加熱部分を設け,これらの間でどのようにエネルギー(熱)が授受されていくかを観察できるようにした.ここに断熱壁に相当する,取りはずし可能な,硬板を押入できる.加熱部分は水平に大きな振幅で振動させる方式を採用したので,隔膜を隔てた被加熱部分の鋼球を運動させ,ピストンを押し上げるに充分な力を得ることができた.又,被加熱部分にそって軽く水平に動くピストンを設けたので,熱力学第一法則の定性的な説明や,断熱変化で何故気体の温度が上昇したり降下したりするのかが,分子運動的に説明可能となった.又,気体の性質も分子運動的に説明できる.熱伝導の様子や物質の三態と温度との関係(相変化の様子)等が動的に観察できる.その他,ブラウン運動と分子運動との関係の説明や拡散現象(エントロピー増加の法則),透析現象の説明にも活用できる等,幅広く物理・化学の分野の授業にも活用できる機能を備えている.

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© 1981 日本物理教育学会
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