物理教育
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静電気を利用した簡単な発電装置 : 出力発生メカニズムの定性的解析
田口 功
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1987 年 35 巻 1 号 p. 31-34

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抄録

静電気を利用しての簡単な実験装置は,現在あまり開発されていない.塩化ビニル板,アクリル板は,絹布でこすると,それぞれマイナス,プラスに帯電するとして一般的に知られ,しかも市販されている.本装置は,この帯電された塩化ビニル板,アクリル板を用いて,電気エネルギーとして取り出し,教材として利用しようと考え,製作を行なった.最初に市販されている目盛付箔検電器を用い,種々の材料の上に帯電板を乗せ,絹布でこすり,帯電板の帯電状況を調べた.その結果,塩化ビニル板の上にアクリル板,塩化ビニル板をのせて,こする場合,それぞれプラスにもマイナスにもなるという結果を得た.実験2では.帯電板の枚数を1枚,2枚,3枚と変えてゆき,本装置の固定金属箔の上に塩化ビニル板を置いて最高3枚までこすっては重ねこすった.2枚,3枚の場合は共に一番初めにこすられた帯電板以外は,定性的ではあるが不安定な帯電をするという結果を得た.また帯電板は必ず表,裏共に同符号の帯電をすることも実験1〜2を通じて明らかとなった.さらに,静電誘導を確かめるための実験を行なった.この実験の結果,本装置の固定金属箔の帯電板の重ねられる側は帯電板とは逆符号の帯電をしているということがわかった.実験4において発光ダイオードを使用し,電流の流れのちがいを調べ,最後に本装置の出力発生メカニズムを考えてみた.そして」帯電板は,表と裏の帯電符号は同じであるが,帯電量が異なっているために電流が流れるのではないかという結論に達した.

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© 1987 日本物理教育学会
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