物理教育
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フックとニュートン : 研究には何が必要か(<連載>科学史)
鬼塚 史朗
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1994 年 42 巻 3 号 p. 331-338

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抄録

フックとニュートンは,ともに17世紀を代表する科学者である。彼らは当時の研究対象のほとんどを手がけ,そのなかで多くの成果をおさめた。そのいくつかは現在でも高く評価されている。しかし,フックの業績は20世紀の半ばまで200年以上も闇に埋もれていた。それは,フックがニュートンとの論争に敗れたからである。古今東西,論争はその敗者に対して過酷である。敗者の多くは地位,名誉,業績を失い寂しく死んだ。しかし,純粋な学術論争は科学の発展に大きな役割をはたす。フックとニュートンの間に争われた光学論争や重力論争も,科学の発展に大きく貢献した。当時,イギリスでは英国王立協会が設立された。フックやニュートンは,この学会のなかで研究方法や研究成果報告の方法を模索しながら学会の基礎を固めていった。その成立過程にみられる模索や試行のなかには,現代にも通じるものがある。本稿では両者の性格やその社会的背景,研究方法などに分析をくわえ,そのなかで,科学にとって真に必要なものは何かを考察した。そこには,現代の科学や教育に対する示唆が多数く含まれている。つまり,17世紀の英国王立協会は,現代の科学や教育にとってもその原点と考えられる事象を多数内在させていた。

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© 1994 日本物理教育学会
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