1996 年 44 巻 4 号 p. 428-431
放射線が生物に与える影響については,「古くからよく知られている」とされ,それゆえ,原子力利用や放射線利用に際しては,他の公害物質とは異なり,「安全確保のための手段があらかじめ講じられている」といった説明がよくなされてきた。現在でも,「微量なら安全である」とか,「微量なら影響は無視できる」といった説明が加えられる場合が多い。しかし,本当にそうなのであろうか。ここでは.微量放射線の影響が解明されてきた過程を振り返りながら,特に問題となる遺伝子の本体DNA(デオキシリボ核酸)に対する影響に重点を置いて,個の問題を論じてみたい。