2019 年 34 巻 1 号 p. 15-18
2017年6月以来,輸入コンテナに紛れて日本国内に特定外来生物ヒアリおよびアカカミアリが持ち込まれるケースが多数報告されている.ヒアリの定着を未然に防ぐためには,輸入コンテナに対する検疫を強化する必要があるが,毎日大量に持ち込まれるコンテナ全てを検査することは不可能である.そこで,我々は,輸入コンテナ全ての内部にワンプッシュ式の高活性ピレスロイド剤エアゾールを噴霧することで,海外から持ち込まれた外来アリ類を全て殺虫する方式を考案した.本方法を実用化するために,すでに国内に定着している特定外来生物アルゼンチンアリを用いて,実際にピレスロイド剤エアゾールによってコンテナ内に潜む個体を殺虫できるか試験を行った.その結果,トランスフルトリン20 mgとプラレトリン3 mgを含むエタノール溶液1 mLを1回定量噴霧し,2時間密閉状態を保つことで,コンテナ内のアルゼンチンアリをほぼ100%殺虫できることが分かった.今後,アルゼンチンアリとヒアリ・アカカミアリの薬剤感受性を比較し,適用薬量を設定することで,この「ワンプッシュ法」でヒアリ・アカカミアリの国内侵入防除に適用できると期待される.