2017年5月,特定外来生物ヒアリの国内初侵入が確認された.それは殺人アリの出現として大きく取り上げられ,日本全体をパニックに陥れた.最近は,ヒアリのニュースも少なくなり,その侵入は無くなったかのように思われている.しかし,今も,ヒアリの侵入は続き,このままでは,その国内定着は時間の問題とも言えそうな事態になっている.さらに,ヒアリと近縁のアカカミアリの侵入も数多く発生している.その侵入と定着を阻止する手立てを見つけ出すことが,まさに,急務となっているが,アリ類には他の生物には見られない特異な生態や習性があり,そのことを理解せずに対処すれば,逆に被害を大きくすることも起こり得る.さらに,ヒアリやアカカミアリの侵入は,日本に輸入される海上コンテナで発生している.その対策には,ヒアリやアカカミアリが国際物流によって外来生物化した生態についても,正しく知っておく必要がある.本稿では,ヒアリやアカカミアリの生物学や侵略生態学の解説を行い,ヒアリやアカカミアリの侵入や定着を阻止するための方策について考察した.
2017年6月以来,輸入コンテナに紛れて日本国内に特定外来生物ヒアリおよびアカカミアリが持ち込まれるケースが多数報告されている.ヒアリの定着を未然に防ぐためには,輸入コンテナに対する検疫を強化する必要があるが,毎日大量に持ち込まれるコンテナ全てを検査することは不可能である.そこで,我々は,輸入コンテナ全ての内部にワンプッシュ式の高活性ピレスロイド剤エアゾールを噴霧することで,海外から持ち込まれた外来アリ類を全て殺虫する方式を考案した.本方法を実用化するために,すでに国内に定着している特定外来生物アルゼンチンアリを用いて,実際にピレスロイド剤エアゾールによってコンテナ内に潜む個体を殺虫できるか試験を行った.その結果,トランスフルトリン20 mgとプラレトリン3 mgを含むエタノール溶液1 mLを1回定量噴霧し,2時間密閉状態を保つことで,コンテナ内のアルゼンチンアリをほぼ100%殺虫できることが分かった.今後,アルゼンチンアリとヒアリ・アカカミアリの薬剤感受性を比較し,適用薬量を設定することで,この「ワンプッシュ法」でヒアリ・アカカミアリの国内侵入防除に適用できると期待される.
形状の異なる切り干し大根(輪切り,千切り,割り干し)におけるノシメマダラメイガの発育を,温度25°C,相対湿度60%,日長:明期16 h,暗期8 hの条件で調べた.その孵化幼虫から羽化までの平均発育日数は,輪切りでは34.8±0.3日,千切りでは37.0±0.4日,割り干しでは40.9±0.4日であり,それぞれ有意に異なっていた.これらの発育日数は,生きた本種幼虫が切り干し大根から発見された場合,その混入時期推定の目安になると思われる.同じ条件で玄米での平均発育日数は35.8±0.5日であり,切り干し大根の輪切りや千切りとは差がなかった.切り干し大根(割り干し)と玄米で発育した本種雌成虫の産卵選好性を,玄米と切り干し大根を対象にして調べたところ,いずれも切り干し大根に対して産卵する割合が有意に高かった.今回の発育や産卵選好性の試験結果から,切り干し大根は本種の食害や混入を受けやすいと考えられ,その管理・保管には注意する必要がある.
蓄光材を付加した粘着トラップは,付加していないトラップと比較して暗条件下でオオチョウバエ成虫の捕獲率が高かった.地下ピットの実地試験でも有効なことが確認された.蓄光材付き粘着トラップはUVライトトラップのような電気は不用であり,捕獲性能も高く,実用上,優れていることが認められた.
都市近郊の家庭菜園には散水用にさまざまな容器などが放置されており,ヒトスジシマカ幼虫の発生源となっている.6月以降10月初めまで,約90%の容器に水が溜まっており,9月初めまでは,その95%にヒトスジシマカ幼虫の発生がみられた.人囮で8分間採集によるヒトスジシマカの捕獲数は5月下旬から10月初めまでみられた.成虫の活動最盛期は6月下旬以降9月上旬であった.樹木・日影・発生源が多い菜園で成虫捕獲数は多かった.反対に日影の無い菜園では成虫の活動は極端に少なかった.専業農家の耕作地(ネギ畑)では幼虫の発生源もなく,成虫の捕獲もできなかった.菜園の耕作者は町会員に限定されているため,感染症リスクが高まれば容器の水の排除は容易である.
千葉県浦安市でサツマツチゴキブリの生息を2005年12月19日に初確認した.以後,2008年12月22日,2012年2月3日,2017年12月22日の調査においても本種の生息が確認された.本報は,本種の本州定着を示唆する初めての報告となる.
2017年7月29日,和歌山県でフタホシモリゴキブリを採集した.このことは本州では初記録となる.
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