財政研究
Online ISSN : 2436-3421
研究論文
租税競争をめぐる新たな展開
―イギリスを事例として
西村 拓哉
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2022 年 18 巻 p. 149-171

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抄録

 2010年代までの世界の法人税率は,引下げ傾向が続くなかで,イギリスは,2010年代の与党保守党が大幅な法人税率の引下げを実施し,これが日米等の税率引下げに影響を与えたが,2021年3月予算で約半世紀ぶりに法人税率の引上げを決定した。本稿では,「底辺への競争」を主導する国であったイギリスによる法人税率引上げを検討した。

 法人税改正の主要事項は,法人税率の引上げおよび時限的な特別償却制度の導入である。当該改正は,イギリスのユニークな政治的意思決定制度のなかで,先行研究で想定されていた政権交代に起因する政策の大幅な変更によるものではなく,保守党内閣の方針変更による改正であった。この改正がなされた背景として,国際税制の動向および,コロナ禍という外生的ショック,EU離脱後のイギリス経済の方向性という国内問題があったことが,議会での議論からわかった。

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© 2022 日本財政学会
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