2006 年 2 巻 p. 200-217
1980年代以降,アメリカの州財政は新連邦主義の影響からその役割が強調され注目が集まっている。その中で,90年代を通じて州所得税改革が相次いで行われたとされる。本稿で取り上げるニューヨーク州は90年代以降,州個人所得税を中心に減税政策を展開するが,その過程で州内経済の変化によって生じた貧困問題などへの対応から勤労所得税額控除などの還付可能な税額控除を増額していく。このとき,各ブラケットでの限界税率の引き下げや基礎控除の引き上げなど従来行われてきた減税政策に加えて,還付可能な税額控除により低所得者層で実効税率が急速に引き下げられていく。本稿ではこうした変化を分析することで,90年代に各州で積極的に導入されていった還付可能な税額控除の影響を,ニューヨーク州のケーススタディを通じて明らかにしていく。