2006 年 2 巻 p. 179-199
事業で得た収益は本来,労働や資本の対価にしたがって給与や配当などに分配されるべきである。しかし中小事業者の場合,この分配の決定(「所得分散行動」とよぶ)が節税動機によって大きく歪められていることが,欧米で指摘されてきた。一方日本でこうした中小事業者の所得分散行動と節税動機の関係を分析した研究は非常に少ない。本稿では個人自営業者の家族従業員(専従者)への給与分配による所得分散行動に注目し,節税動機がそうした行動に影響を与えていると考えられることを示す。そのうえで,こうした行動がもたらす経済学的な問題点について考察する。