2006 年 2 巻 p. 249-264
租税は,財源調達手段であると同時に,政策上の目的を実現するための政策手段としての側面を持っている。本稿は,法人課税の政策手段としての側面を分析の対象とし,その意義と限界を明らかにする。その素材として1930年代にルーズヴェルト政権が導入した「留保利潤税」を取り上げる。留保利潤税は当時,一方で産業の競争条件を均等化させるための規制手段として捉えられ,他方で配当支払いの促進を通じて,経済安定化に寄与する政策手段として捉えられていた。留保利潤税は,価格メカニズムを利用することで配当支払いを促進した反面,外部資金調達コストの高さに直面する中規模企業に重い税負担をかけ,この点では政策意図と矛盾する結果を生んでしまった。にもかかわらず,現代政策課税のあり方を構想する上では,留保利潤税の教訓から政策課税の現代的意義を引き出しておくことは重要だと考えられる。