2008 年 4 巻 p. 184-200
公的年金の運営方法には,保険料(徴収面)と所得代替率(給付面)のいずれを固定するかで,2つの運営方法がある。賦課方式の公的年金と児童手当には関連性があることが,近年の研究で明らかになってきた。児童手当の拡充で出生率が改善した場合,保険料率を一定にして所得代替率を高める方法が好ましいのか,あるいは,所得代替率を一定にして保険料率を軽減させる方法が好ましいのか,2つの運営方法の比較を行う。
本稿の分析により,給付水準固定方式における(育児費に対する)児童手当率の調節は,保険料率固定方式よりも社会厚生値を高めることが示された。また,児童手当率の変更によって家計のタイプ間の移動が行われるため,政策発動前後で各タイプの最適な政治的選択が変わってしまうことも示された。