財政研究
Online ISSN : 2436-3421
研究論文
政府消費,公共投資,政府雇用の違いに着目した財政政策の効果
江口 允崇平賀 一希
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2009 年 5 巻 p. 141-156

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抄録

 本稿では,政府消費,公共投資,政府雇用のそれぞれが,経済に与える影響の違いについて分析する。そのために,政府支出の項目を政府消費,公共投資,政府雇用の3つに分けた動学的一般均衡モデルによるカリブレーション分析を行うとともに,そこで得られたインパルス・レスポンスを,1969年から2008年までの日本のデータを使ったVARモデルのインパルス・レスポンスと比較した。

 カリブレーション分析とVAR分析の結果は概ね整合的であり,次のような結果が得られた。第1に,公共投資は,消費と投資に対してプラスの効果を持つ。第2に,政府消費は,消費に対してはマイナス効果を持つ一方で,投資に対してはプラスの効果を持つ。第3に,政府雇用は,消費と投資に対してともにマイナスの効果を持つ。これにより,政府支出の増大による景気対策,または政府支出の削減による財政再建は,その内容によってまるで違う効果が現れてしまうことが示された。

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© 2009 日本財政学会
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