致死性広範性肺動脈血栓塞栓症の7剖検例の下肢深部静脈血栓症(DVT)を,左右下肢深部静脈全域の組織標本作成にて観察した.7例全例が,左右両側性のDVTであった.また全例に塞栓子の残存と考えられる新鮮血栓が存在し,部位は8割が下腿静脈に限局していた.高度な器質化血栓像であるbands and webs像(B&W)は6例に認められた.各症例で新鮮血栓の先行病変として同側の末梢側にB&Wが存在する傾向がみられた.血栓形成が器質化と再発を繰り返しながら中枢へ成長する過程が推察された.ヒラメ静脈血栓は両側全例に存在し,塞栓子の発生源としての重要性が推察された.
症例ごとの新鮮血栓と器質化の分布から,ヒラメ静脈より発生した血栓が,両側性に徐々に血流の流れに沿って腓骨・後脛骨静脈を経て膝窩静脈に注ぎ,同部で遊離血栓となって塞栓子化に至る過程が推察された.