我が国においても静脈血栓塞栓症の発症頻度が増加していることが報告されている.一方,術後における肺動脈塞栓症の発症はリスクマネージメントの観点からも問題となり,多くの異なる予防ガイドラインが作成されている.ガイドラインはエビデンスに基づいて作成されるべきであるが,我が国においては発症頻度や予防法の効果に関する十分なエビデンスがない.また,予防ガイドラインはその発症頻度から考えても個々の施設ではなく,全国的な問題として取り扱われるべきである.このような状況から我が国の静脈血栓塞栓症に対する予防ガイドラインが作成された.本ガイドラインは第6回ACCP(American College of Chest Physicians)のガイドラインに基本的に準拠しているが,我が国の十分なエビデンスに基づいたものでない.従って,全国的な疫学的調査によりその妥当性を検討し,今後必要に応じて改訂していく必要がある.一般外科領域における本ガイドラインの理論的根拠と問題点について言及した.